<社説>恩納工事現場被弾 海兵隊は本国に撤退せよ


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 起きてはならない事故が恩納村で起きた。米軍キャンプ・ハンセン内の安富祖ダム工事現場で、米軍の流れ弾とみられる損傷が水タンクと作業員の車から見つかった。

 流弾があった当時、周辺に人がいたり、方向がそれていたりすれば大惨事になった可能性がある。キャンプ・ハンセンでの流弾被害は戦後幾度も繰り返されてきた。住民と基地の近さに原因があるのは明らかだ。狭い沖縄で危険な実弾演習をすること自体が間違っている。
 キャンプ・ハンセンを管理し、主に演習を行う海兵隊はそもそも沖縄に不要といわれる。住民の安全を考えるなら、海兵隊は本国に帰ってもらうしかない。どうしても実弾演習が必要というなら本国の広大な演習場で実施すればよい。
 恩納村や県、沖縄防衛局によると、6日に工事現場の水タンクに穴が空き、タンク内から銃弾らしきものが発見された。13日には現場に止めてあった作業員の車に傷があり、近くに銃弾らしきものが落ちていた。
 こうした危険にさらされる場所が日本のどこにあるのか。安倍晋三首相は13日の参院外交防衛委員会で、沖縄の基地負担軽減は「安倍政権が米国と交渉して実現した」と主張した。だが首相が言う「軽減」とは新たなヘリパッド建設を条件とした北部訓練場の過半の返還や効果が疑問視される軍属の範囲明確化など、いずれも見せ掛けだけのものだ。
 沖縄の現実は「軽減」どころではない。危険と隣り合わせの過重負担がいまだ続いている。
 元凶は不必要に大きな演習場を手放さず、危険な訓練を繰り返す米海兵隊だ。真の負担軽減とは、政府が海兵隊撤退を求めることだ。
 一方で2008年に起きた金武町伊芸の流弾事件を念頭に、県警内では立件困難との見方もある。
 伊芸の事件では県警の基地内立ち入り調査や部隊への事情聴取などに米軍の協力が得られなかった。公務中の第一次裁判権が米側にある不平等な日米地位協定が真相解明を阻んだ。
 同じことを繰り返してはならない。国民の生命に危機が迫っているのだ。政府は捜査への協力を米軍に求める責任がある。
 現場にあった銃弾らしきものは米軍が回収しており、関与は明らかだ。責任の所在を明確にするだけでなく、沖縄の過重負担解消策を日米政府は真剣に考えるべきだ。

英文へ→Editorial: The Marines must withdraw to the continental U.S. after stray bullets found at Onna construction site