<社説>特殊詐欺被害 防犯意識と「声掛け」促そう


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 振り込め詐欺などの特殊詐欺がますます巧妙化している。警察官をかたる男らに約5400万円をだまし取られる事件が那覇市で発生した。個人の被害額としては2010年以降、最多だ。「世に盗人(ぬすっと)の種は尽きまじ」との歌があるが、人をだます新しい種を次々と繰り出す詐欺師から、自身や家族を守るすべを考えねばならない。

 手口はこうだ。69歳男性に警察官や金融機関の職員を名乗る男から「あなた名義の偽造通帳が発見された。預金が狙われている可能性がある」とうそを言って預金を全額引き出させた。さらに「(引き出した)金が偽造された可能性もある。調べる」と言って現金をだまし取った。
 特殊詐欺事件は子や孫をかたる「おれおれ詐欺」から架空請求まで、さまざまに手口を変えている。最近多い還付金詐欺は「医療費の還付金が出た」などと言って現金自動預払機(ATM)から指定する口座に現金を振り込ませる。
 16年の県内の特殊詐欺の被害は31件、約3600万円で、前年より63・6%減少したが、還付金詐欺に限っては16件と、前年の8件から倍増した。
 こうした中で、ATMを使った詐欺では金融機関の職員やコンビニエンスストアの店員らの「声掛け」が被害を防いだ例が多い。コミュニケーションが犯罪防止にも一役買っている。
 個々人の意識も問われる。内閣府の世論調査で「自分は『おれおれ詐欺』など特殊詐欺の被害に遭わない」と考えている人は80%を超えた。このうち被害者の過半数を占める70歳以上は、2人に1人が「だまされない自信がある」と回答した。認識の甘さから防犯対策が手薄になり、被害を生む要因になっている。
 県警は「警察官や金融機関の職員が預金を引き出すよう指示したり、現金を預けるよう求めたりすることは絶対ない」とした上で、「不審な電話を受けた場合は、最寄りの警察や銀行、家族や友人など第三者に必ず相談してほしい」と呼び掛けている。
 被害防止には詐欺の手口を知って防犯意識を高めるとともに、常日頃から家族や友人、地域社会が互いに「声掛け」できる関係を築きたい。警察や行政は防犯キャンペーンなどを通じて手口の周知を図り、未然防止に努めてほしい。