<社説>核再処理施設廃止 「負の遺産」拡大を止めよ


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 原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す国内初の再処理工場「東海再処理施設」の解体撤去の総費用が、作業終了までの70年間で約8千億円に上るとみられることが明らかになった。政府は、核燃料サイクル政策が技術的にも経済的にも成り立たず、将来世代への「負の遺産」を生み続けることを認め、脱原発にかじを切るべきだ。

 1977年に再処理を始めた東海再処理施設は老朽化などのため2014年に廃止が決まった。むき出しになった放射性物質を扱うため、費用は原発廃炉の10倍以上かかるとされる。
 運営主体の日本原子力研究開発機構は、最初の10年間にかかる費用を約2170億円と公表していた。その後の60年間でさらに約5830億円かかるということだ。機器や設備の除染・解体、処分場への輸送、そして埋設の費用である。放射線レベルの高いものは地下300メートル以下に地層処分しなければならず、ドラム缶1本分で800万円かかるという。
 今回の試算には、放射性廃液などをドラム缶に入れてセメントモルタルで満たすなどの処理費用は含まれていない。埋設する最終処分地も決まっていない。どこまで費用が膨らむのか、機構と政府は丁寧に説明する義務がある。
 東海施設の技術を引き継いだ日本原燃の初の商業用再処理工場(青森県)は完成延期を繰り返している。建設費も膨張し、いつ完成するのか分からない状態だ。
 現在の核燃料サイクルでは、ウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を燃やすプルサーマル発電が行われているが、稼働している原発は1基にとどまる。
 将来目指すとしている高速炉も、原型炉もんじゅが1兆円以上の国費を投じながらまったく成果を上げられず、昨年末に廃炉が決まった。廃炉には最低でも3750億円かかるとされる。にもかかわらず政府は高速炉の実証炉の開発に着手すると決定している。
 商業用再処理工場がいつ完成するか分からず、高速炉も技術的な見通しが立たない。現在の核燃料サイクルにこれ以上無駄に国費を投じ続けるべきではない。
 さらに、原発の再稼働を進めれば使用済み核燃料が増え続ける。核燃料サイクルが成り立たない以上、原発の稼働も「負の遺産」の拡大に他ならない。