<社説>今村復興相更迭 政府の「地方蔑視」の表れだ


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 家族を失った人たちの心を傷つけ、地方を見下した発言だ。被災地を「あっちの方」と呼ぶ人物に大臣どころか、国会議員の資格すらないことは明らかだ。

 今村雅弘復興相が東日本大震災について「まだ東北で、あっちの方だったから良かったけど、これが首都圏に近かったりすると莫大(ばくだい)な被害があった」と発言した。自身が所属する自民党二階派のパーティーに登壇してのことだ。
 今村氏は今月4日にも、東京電力福島第1原発事故で自主避難した人たちの帰還問題について「本人の責任、判断だ」とし、「(不服なら)裁判でも何でもやればいい」と述べた。質問した記者には「うるさい」と怒鳴った。
 二つの発言から見えるのは、被災者や被災地に寄り添うどころか「自己責任」として突き放す姿勢であり、今村氏をはじめとした政府の地方蔑視だ。安倍晋三首相の任命責任は厳しく問われるべきだ。
 さらに二階俊博幹事長がメディア排除に言及したことにも安倍1強態勢のおごりが見える。
 今村氏は発言後、記者団に「東北でも25兆円も毀損(きそん)する災害だったから、首都圏ならとんでもない災害になるだろうという意味だった」と釈明した。
 震災の死者は1万5893人、行方不明者は2553人。震災関連死3523人を合わせると、犠牲者は2万1969人に上る。その被害を軽視し、金額の多寡でしか捉えない発想自体が許し難い。
 都市部であれば復興費用は多く、経済活動への影響も大きいという発言は、逆に言えば地方なら影響が少ないからまだましだという本音につながる。
 だから原発も米軍基地も首都圏ではなく、地方へ押し付ける構図になる。現に原発事故からわずか2年後、安倍首相は東京五輪招致のスピーチで福島第1原発の汚染水を「アンダーコントロール(制御)されている」と偽り、その後、各地で原発の再稼働を進める。
 国土面積の0・6%しかない沖縄に在日米軍専用施設の70%を置き続け、さらに名護市辺野古に新しい基地の建設を強行する政府の姿勢も地方蔑視に通じる。
 地方の犠牲の上に首都の繁栄を築くという発想を変えない限り、福島の問題も沖縄の問題も解決しない。地方自治を確立することが必要だ。