<社説>先住民族世界会議 国際社会に共感広げよう


この記事を書いた人 琉球新報社

 国連本部で開かれている第16回先住民族世界会議で、アジア地区代表による声明に「沖縄人の理解がないままに新基地建設を強行している」とする文言が盛り込まれた。国連の場で沖縄の基地問題への理解が着実に広がっていることを示すものである。

 沖縄の民意を無視して強権的手法を取り続ける日本政府を揺さぶる意義は大きい。今後も国際社会への訴えによって共感を広げる努力を続けたい。
 会議に出席した友知政樹沖縄国際大教授はNGO主催のイベントで、名護市辺野古で工事が強行されていることを報告した。日米両政府を批判し工事中止を強く求めたことに対し、アジアや南米の参加者から危機感を共有する発言があったことも心強い。
 新基地建設やオスプレイ配備に対し、沖縄では選挙や大規模集会などあらゆる方法で反対の意思を示してきた。しかし、日本政府はこの民意を踏みにじり、言論表現の自由の表出である抗議行動を警察力で封じ込めながら、強行を繰り返している。このような状況を打開する努力の一つとして国連の場で訴えているのである。
 今回の声明では「国連による度重なる勧告にもかかわらず日本政府が沖縄の人々を先住民と認めていない」とも批判した。
 先住民とは、ある土地に元来住み着いている人間集団のことである。沖縄にルーツを持つ人々がそのようなアイデンティティーを持っていることが、国連での議論の前提にある。日本に併合され同化政策が取られた歴史を踏まえれば、先住民として自己決定権を主張するのは自然なことだ。
 友知教授によると、声明に対し日本政府代表が「立ち入り禁止区域に入るなど違法な抗議活動が行われている」と発言した。15年に翁長雄志知事が国連人権理事会で「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている」と訴えた時も「日本の国家安全保障は最優先の課題だ。辺野古移設計画は合法的に進められている」などと主張した。
 沖縄の自己決定権侵害の問題として議論されている場でこのような筋違いの主張しかしない日本政府は、国際的な信用を失っている。沖縄に対する差別政策を直ちにやめ、沖縄の自己決定権、民意を尊重することなしに、信用を取り戻すことはあり得ないことを知るべきである。

英文へ→Editorial: Increasing support from the international community at the UNPFII