<社説>復帰県民世論調査 政府への不信を表明した 基地負担の不平等改めよ


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 「日本は帰るべき祖国だったのか」という疑念が県民意識の奥底に広がってはいないか。
 復帰45年を迎えるのを前に琉球新報社は県民世論調査を実施した。復帰して「とても良かった」「どちらかと言えば良かった」は75・5%で、5年前の前回調査より4・5ポイント低下した。
 復帰評価の下落は、復帰を知らない世代が増えたこともあるが、沖縄に対する専横を改めない日本政府に原因がある。その政府を容認する国民全体への不満も影響した。
 復帰後も続く沖縄差別への憤りが復帰評価を下げた。政府への不信が本調査に表れている。

民意無視に厳しい評価

 2007年に本紙が実施した復帰35年世論調査では、復帰して「良かった」と答えた人は82・3%だった。12年の復帰40年調査では80・0%である。復帰に対する評価は10年で6・8ポイント下落している。復帰評価の下落傾向を軽視してはならない。
 復帰後の沖縄振興施策によって社会資本整備が進んだ。医療・福祉、教育面で県民の生活水準は向上した。県外との交流も進んだ。今回の調査でも県民はこれらの点を高く評価している。
 復帰によって多くの県民が豊かさを獲得したのは事実だ。しかし、基地との共存を強いられ、基地被害や人権侵害の不安を抱えているのも事実だ。
 今回の調査で「復帰して悪かったこと」を聞いた設問で43・7%の人が「米軍基地の被害が増えた」と回答した。「国や県が力を入れて取り組んでほしい施策」として44・6%が「米軍基地の整理縮小と跡利用」を挙げた。いずれも最多である。
 在日米軍基地の7割が沖縄に集中している現状に対しては70・0%が「不平等」と答えた。これらの数値は県民が求めた復帰の理想が今も実現していないことを反映するものだ。
 米統治に抵抗した復帰運動で、県民は県民の生命・財産を脅かす米軍基地の撤去、基本的人権を保障する日本国憲法の沖縄への適用を求めた。
 しかし、復帰から今日までの45年間、日本政府は日米同盟を優先するあまり、県民要求を軽んじた。政府が強行したMV22オスプレイ配備、辺野古新基地建設はその最たるものである。
 憲法が定めた「法の下の平等」が沖縄には適用されていない現実に県民は失望している。特に米軍基地の集中について10代の若者の過半数を超える53・3%が「やむを得ない」と答えた。若者世代に失望やあきらめが広がっている。憂慮すべき事態だ。

県民の要求直視せよ

 県民の多くは政府の差別的な姿勢に反発し、日本本土の国民との断絶を実感している。このような現状を放置することは沖縄、日本全体にとって不幸なことだ。政府はいま一度、復帰における県民要求を直視しなければならない。
 当然、政府は辺野古新基地の建設を断念すべきだ。本調査で74・1%が普天間飛行場の県外・国外移設、即時撤去を求めた。新基地建設の容認・推進を支持した人は18・0%にとどまっている。
 基地撤去と人権の尊重を求めた復帰運動の帰結が新基地建設であってはならない。政府は米統治下にあった沖縄の苦悩、復帰運動で掲げた要求、今日の沖縄の民意と正面から向き合うべきだ。
 1971年5月21日、沖縄返還交渉に対する最終要請で基地の整理縮小を求めた屋良朝苗主席に対し、佐藤栄作首相は「本土の(基地)負担を沖縄におわす様な事はしない」と約束した。基地の自由使用についても「米軍の勝手にはできまい」と答えている。復帰後の核再持ち込みも否定した。
 佐藤首相の約束は守られないまま沖縄は復帰を迎え、安倍政権は今日、新基地建設を強行している。県民はそのような非道を許さない。復帰45年世論調査はそのことを明確に示している。