<社説>教員ハラスメント 管理職の意識改革が必要だ


この記事を書いた人 琉球新報社

 果たして子どもたちに「いじめは良くない」と胸を張って言えるのか。学校現場の実態を憂う。

 県教職員組合(沖教組)が実施した幼稚園・小中学校教員へのアンケートで、地位を利用するなどの嫌がらせ(パワーハラスメント)や性的嫌がらせ(セクシュアルハラスメント)を受けたことがある教員が15・8%(回答1041人中164人)いた。
 大半が校長、教頭ら管理職から受けたものとみられる。アンケートの自由意見からは評価システムを盾に取った管理職の高圧的な態度や、心理的な不調を訴える教諭らの切実な叫びが浮かび上がる。
 学校現場での嫌がらせを根絶するには、管理職の意識改革に今すぐ着手しなければならない。
 自由記述によると「私の評価であなたたちの給与が決まる」などと発言した管理職がいたという。
 教員評価システムは2014年の地方公務員法などの改正に伴って導入された。能力と実績に基づく人事管理がその目的だ。
 県教育委員会が公開している教職員評価マニュアルでは、信頼性を向上するため「印象や性格といった不明確なものを評価するものではない」と明記している。
 だが評価を盾に取ることで自由な意見を封じる雰囲気が広がり、正当な意見を述べる教員を無視するといったことも起きている。校長個人の好き嫌いによって、評価がゆがめられているのではないかという現場の懸念はもっともだ。
 12年に厚生労働省が初めて実施した全国パワーハラスメント実態調査報告書によると、予防・解決への取り組みで効果を実感できるものは「管理職対象の講演や研修」が最多の77%だった。波及効果として「管理職の意識の変化によって職場環境が変わる」という回答も最多の45%あった。
 校長、教頭らの管理職は権力を背景に業務を押し付けるのが仕事ではない。中学で半数以上が過労死水準とされる業務の在り方見直しなど学校現場の課題は山積している。その解決にこそ力を注いでもらいたい。
 深刻なのは被害者が泣き寝入りしているかもしれないことだ。16年度に県や市町村教育委員会にハラスメントの報告は寄せられていない。少なくない教員が悩みを1人で抱え込んでいるなら見過ごせない事態だ。一部の不心得な管理職の問題では済まされない。各教委も早急に対策を講じるべきだ。