<社説>銀行収益環境悪化 金融政策を転換すべきだ


この記事を書いた人 琉球新報社

 県内地銀3行の2017年3月期連結決算が出そろった。16年9月期中間連結決算が減益となったことから予想されていたが、3行合計の連結純利益が27・9%減の139億1600万円となり、収益環境の悪化が鮮明に表れた。

 日銀のマイナス金利政策による影響であることは明らかだ。県内地銀に限らず、全国的にも同じような傾向だ。景気への刺激など当初の目的が達成できず、破綻寸前にある金融政策は転換すべき時期に来ている。
 世の中にお金が出回っているかどうかを見る目安として「預貸ギャップ」がある。金融機関の預金残高から貸出金残高を引いたものだ。
 最近の沖縄経済の強みは好調な観光業などにけん引されて拡大基調が続き、資金需要が旺盛なことにある。県内3行の預貸ギャップを見ると、15年3月期時点の1兆3365億円から16年3月時点では1兆2333億円に縮まっている。預金残高の伸びは鈍化しているが、貸出金残高は毎年5%程度増え、市中に出回るお金が増えたことが分かる。
 だがマイナス金利下では利息も下げ止まらない。貸出金の量的拡大で、低下した金利分を賄うというモデルが行き詰まったことが、今回の銀行決算からうかがえる。
 県内各行とも金利競争からの脱却を目指し、投資信託などの販売手数料確保や事業支援、資産運用など企業に寄り添う形での営業力強化に戦略見直しを迫られる。金融は経済の要である。特に地方活性化が必要とされる今、地場産業に資金を供給する地域金融機関の役割は重要だ。各行の実効性ある戦略策定に期待したい。
 銀行の収益環境は全国的にも悪化している。九州・沖縄の地銀21行でも19行が減益となった。17年4月時点で、全国金融機関の残高を合計した預貸ギャップは233兆2667億円ある。それだけのお金が市中に出回らず金融機関にとどまっているのだ。
 マイナス金利による金利低下で住宅ローンなどの軽減など一部に恩恵はあった。
 一方では企業にお金が回らず、預金に利息がほぼ付かない時代が来ている。個人の防衛策は節約ぐらいしかなく、消費が一層冷え込むのは間違いない。
 国内総生産(GDP)の柱である個人消費の回復に目を向けるなら、マイナス金利政策の失敗を日銀は認めるべきだ。