<社説>21世紀ビジョン 豊かさ享受できる沖縄に


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 沖縄が抱える諸課題に対処するため、見直しと検証、評価を重ねながら計画を実行したい。目指すべきは県民が等しく豊かさを実感できる県土づくりである。

 県は振興計画である「沖縄21世紀ビジョン基本計画」を改定した。
「子どもの貧困」問題や大型MICE施設を核とした産業振興などが追記された。改定は延べ305カ所に及ぶ。
 基本計画について市町村長の見解を聞いた本紙アンケートでも多くの首長が「子どもの貧困」対策や観光産業振興を重要施策に挙げた。首長の意向にも沿う改定だ。
 21世紀ビジョン基本計画は2012年に策定した10年計画で、折り返し点を過ぎた。沖縄の現状に照らして「子どもの貧困」を改定で盛り込んだのは妥当な判断だ。
 沖縄の子どもの貧困率は全国平均の2倍近い水準に当たる29・9%に上ることが16年1月の調査で明らかになった。今年3月の県高校生調査も学費や通学費を稼ぐため、アルバイトに追われる高校生の姿を浮き彫りにした。
 未来を担う子どもたちの選択肢を狭めるような沖縄社会であってはならない。現行の「県子どもの貧困対策推進計画」を着実に進めるためにも、上位計画で明確に位置付けた意義は大きい。
 大型MICEを核とした産業施策も強力に推し進めたい。アジアに開かれた沖縄に整備される大型MICE施設は国際的な経済・学術交流、展示会・見本市の一大拠点となる可能性がある。県経済界への波及効果は計り知れない。
 重要なのはMICE施設をどう活用し、沖縄の産業振興につなげていくかという具体的な戦略である。注目度の高い国際イベントの誘致、県内産業との有機的な連携など、さまざまな取り組みが必要となる。21世紀ビジョンにふさわしいプロジェクトとなるはずだ。
 大型クルーズ船に対応できるバースの不足、台湾・中国人観光客相手の白タク行為の横行など、外国人観光客の急増に伴い、課題も見えてきた。基本計画の中で解決を図りたい。
 計画は何よりも実行力が求められる。改定した基本計画を推進するため、県は9月ごろをめどに、各施策の成果指標(目標値)を盛り込んだ「実施計画」を策定する方針だ。21世紀ビジョン基本計画が描く新しい沖縄像を具現化するため、綿密な議論を踏まえた実施計画をまとめてほしい。