<社説>天皇退位法案 「象徴」の役割含め論議を

 政府は天皇陛下の退位を実現するための皇室典範特例法案を閣議決定した。議論のきっかけは退位の意向をにじませた陛下の昨年夏のビデオメッセージだったが、少子高齢化という皇室の抱える課題も浮かび上がった。

 法案は一代限りの特例法で、皇室典範を根本的に改めるわけではない。天皇の高齢化と、皇族の減少は今後も続く。それに対応できる法案とは言い難い。象徴天皇としての役割を含め、現状の課題を整理し、今後の議論につながる国会審議にしてほしい。
 政府は陛下の退位の具体的な時期について今後判断する方向で、2018年12月23日の天皇誕生日を節目とする案が取り沙汰されている。皇位継承によって改める元号は18年夏にも事前発表し、適用は19年1月1日とする案が浮上している。
 これでスムーズな代替わりができたとしても、皇室の課題が解決するわけではない。秋篠宮家の眞子さまの婚約準備も明らかになった。未婚の女性皇族は7人いるが、現行制度では結婚すれば皇籍を離れる。皇族の減少は避けられない。民進党は女性宮家の文言明記を目指すが、自民党内には慎重論が根強い。
 被災地の見舞いや各地への訪問などは国事行為とは違い、象徴としての天皇の公的行為である。陛下はビデオメッセージで「象徴天皇の務め」とし、安定的継続を望んだ。こうした務めを多くの国民が支持してきた。
 沖縄戦や、1947年9月に米国が沖縄の軍事占領継続を希望すると連合国軍総司令部(GHQ)に伝えた、いわゆる天皇メッセージがあり、沖縄県民が特に昭和天皇には複雑な感情を持っていることは確かだ。
 しかし、陛下が沖縄をはじめ、南洋群島、フィリピンなど日本が侵略し戦争被害を与えた土地への慰霊の旅を続けていることは、国民の「象徴」として多くの人たちが意義を見いだしている。
 皇室はあくまでも主権者である国民の総意の上に成り立つ。
 象徴天皇の役割とは何か。天皇の公的行為をどう位置付け、どの程度行うべきか。現時点での課題を整理し、来週後半以降に始まる見通しの国会審議で、「女性宮家」創設を巡る付帯決議の取り扱いを含め、議論してほしい。