<社説>国内初の旧石器墓地 保存、活用に知恵集めよう


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 2万7千年前に石垣島に風葬墓地があったことが、白保竿根田原(さおねたばる)洞穴遺跡の調査で確認された。国内初の旧石器時代の墓地の確認であり、世界的成果として注目されている。調査・研究に当たった関係者に敬意を表するとともに、人類全体の遺産として保存と活用に県民挙げて知恵を集めたい。

 現生人類、ホモ・サピエンスは20万年前にアフリカで誕生し、6万年前ごろから世界に広がった。琉球列島には海を渡って3万年以上前に到達した。この旧石器時代の人々が何を考え、どんな暮らしをしていたのかが徐々に分かってきた。白保遺跡が、南城市のサキタリ洞遺跡とともに大きく貢献している。
 白保遺跡は全身骨格の発見、人骨の古さ、数の多さ、保存のよさなどで驚くべき成果を上げてきた。骨にコラーゲンが残っていたことから、骨から直接、放射性炭素法による年代測定ができ、DNA分析も可能になった。
 日本最古の人骨とされる山下洞人や港川人などが周囲の地層や遺物からの間接的年代測定であることとは決定的に違う。その結果「白保4号人骨」は直接測定として日本最古の約2万7000年前のものと分かった。
 また、DNA分析によって東アジア一帯の旧石器人との系統関係が検討されている。出土した人骨の血縁関係も見えてくるだろう。
 そして今回の墓地としての確認である。生と死の空間を区別していたことは、まさしく文化的活動であることを示す。旧石器時代人の宗教観、死生観、生活史を探る上で、意義は計り知れない。
 一連の発見は、東アジアでの旧石器人の展開を研究する重要な手掛かりである。今年夏には竹舟で台湾から与那国島を目指して3万年前の航海を再現しようという実験が行われる。白保遺跡の4体の頭骨の3次元デジタル復元も進められている。
 東京の国立科学博物館では来年、これらの成果を紹介する企画展を開催する。人類史研究の中心地として沖縄はさらに注目されるだろう。
 遺跡の保存は当然だが、教育などへの活用も積極的に進めていかなければならない。観光資源としても期待が大きい。沖縄には未発見の貴重な遺産がなお眠っているはずだ。人類全体の宝を失わないよう関係者の地道な努力を願うとともに、県民の意識も高めていきたい。