<社説>旅客数2千万人超 第2滑走路完成後の議論を


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 急増する旅客数に対応する空港の在り方を考えたい。第2滑走路完成後の那覇空港の機能強化に向け議論を急ぐべきだ。後手に回ってはいけない。

 国土交通省大阪航空局がまとめた2016年度の那覇空港旅客数(速報値)が前年度比8・0%増の2003万6318人となり、初めて2千万人を超えた。
 5年連続の増加だ。入域観光客数が好調に推移している。特に格安航空会社(LCC)の就航増が旅客数を押し上げた。国際線旅客数の増加も著しい。09年と比較して、旅客数は10倍にも増えている。
 旅客数増は沖縄の基幹産業である観光産業の振興を裏付けるものであろう。しかし課題もある。那覇空港の機能が旅客の急増に対応できなくなる恐れがあるのだ。
 沖縄総合事務局と那覇空港事務所が13年度に策定した環境影響評価で示した2030年度の需要予測は最少1605万人~最大1928万人であった。実際の旅客数の伸びは予測を大幅に上回った。
 県経済界では、増設中の第2滑走路が20年に完成しても、早いうちに滑走路発着が飽和状態に陥りかねないとの見方もある。旅客増に空港が対応できなくなるような事態は避けなければならない。
 空港など社会資本は財政面と需要予測をにらみながら整備するのが通例であろう。予測を上回る需要が生ずるのであれば、整備方針の見直しを迫られることもある。
 現在の国際線ビルは完成当初から手狭感が指摘された。新規の国際路線の拡充によって計画段階の需要見通しが追い付かないのだ。
 空港ビルを運営する那覇空港ビルディングは国際線ビルと国内線ビルを一体化した「連結ターミナル」の運用を1年前倒しする。このような空港機能を支える取り組みを積極的に進めたい。
 那覇空港は国管理空港であり、その整備は沖縄の地域振興のみならず、日本の航空政策上重要な意味を持つ。日本経済全体に寄与する那覇空港のさらなる活性化に向け、長期的な戦略を練ってほしい。
 那覇空港の軍民共用の見直しも射程に入れるべきだ。過密化が進む那覇空港の現状を考えた場合、純民間空港化は避けられぬ課題だ。
 大型クルーズ船に接岸できるバースの不足も問題となっている。需要予測に拘泥せず、大胆な発想による空港や港の整備を求めたい。