<社説>次期学習指導要領 主体的学びと矛盾しないか


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 文部科学省が小中学校の次期学習指導要領を2020年度以降に円滑に実施するための18年度からの移行措置の内容を公表した。

 学校現場にとって大きな変化となるのは、小学校での「外国語活動」の前倒しに充当する時間を、総合的な学習の時間(総合学習)の一部でまかなうというものだろう。
 しかし、次期学習指導要領の柱となり、今後の大学受験でも求められるのは「主体的な学び」である。自発的な学習を目的とした総合学習の時間を削るというのは本末転倒ではないか。
 文科省が公表した移行措置は英語の「聞く・話す」中心の外国語活動を小学3~6年で実施し、「総合的な学習の時間」の一部を使用可能とする。5、6年では次期指導要領で正式な教科となる英語の内容の一部も扱う。国語の漢字や社会の領土などの一部先行実施も盛り込んだ。
 20年度の次期指導要領の全面実施では、小学校は土曜日や夏休みを使うなどして外国語活動の授業時間を捻出するよう求められている。18年度からの移行期間中はさらに総合学習を利用できるようにする。
 ただ、土曜日の授業は家庭の理解を得られるか分からない。夏休みは教員らの研修なども入り、教育関係者の多くは「結局は総合学習を置き換える方向に行くだろう」と見る。
 総合学習は教科の枠にとらわれず、比較的自由な授業が可能な時間だ。教師や子どもたちが主体的にテーマを設定し、課題に取り組む場になっている。
 次期学習指導要領は「主体的、対話的で深い学び」を掲げ、子どもたちが自ら学習に取り組む姿勢を目標とする。
 現行の大学入試センター試験に代わり、20年度から導入する「大学入試共通テスト(仮称)」も、知識偏重の大学入試から、思考力や主体的に学習に取り組む姿勢を評価する入試への転換を掲げ、国語と数学の一部に記述式問題を出すことを決めた。
 外国語学習を総合学習の時間に置き換えるのは、増加する授業時間を確保する苦肉の策であろう。しかし、次期学習指導要領や新たな大学入試が目指す学習の姿との一貫性がない。主体的な学習の時間を削らざるを得ないような指導要領の実施ではなく、量より質の向上を求めていくべきである。