<社説>米、パリ協定離脱か 排出大国の責任果たせ

 トランプ米大統領が、地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」からの離脱を固めたと米主要メディアが伝えている。

 温室効果ガス排出量で中国に次ぐ2位の米国が離脱を表明すれば、世界的な取り組みが後退するのは必至だ。離脱すればこの枠組みを先導してきた米国の信頼は失墜する。排出大国として責任を果たすために協定にとどまるべきだ。
 パリ協定は、2015年末にパリでの気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された。今世紀後半に世界の温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にし、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指している。
 きっかけは米国だった。1979年、米政権の要請で米科学アカデミーが大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が高まると気温が上昇することを予測し、温暖化対策の必要性を世界に示した。
 その後、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「温室効果ガスの排出が続けば(海面上昇など)重大な影響を及ぼす気候変化が起きる」と警告。これを受け世界全体で温暖化防止を目指す「気候変動枠組み条約」が誕生した。97年に京都議定書、2015年にパリ協定の採択につながった。オバマ前米大統領は16年9月、中国の習近平国家主席と共にパリ協定批准を正式発表し、協定は11月に発効した。
 だがトランプ氏は、選挙期間中に「温暖化はでっち上げ」と発言し、パリ協定離脱を示唆した。それなら根拠を示すべきだ。気象庁は温暖化対策が全く進まない場合、日本の平均気温は21世紀末に20世紀末より4・5度上がるというシミュレーション結果を公表している。沖縄は35度以上の猛暑日が年間54日程度増えるという。
 技術開発と大量導入によって、世界的に再生エネルギーのコストが大きく低下した。経済合理性のある選択肢となったことで、世界的にエネルギー転換が進んでいる。
 再生エネルギーの拡大は、地球温暖化対策だけでなく、増え続ける発展途上国のエネルギー需要に対して安定的なエネルギーをもたらす。パリ協定はこうした動きを促進する制度なのである。
 トランプ政権がパリ協定を離脱するなら、米国は世界から孤立するだろう。