<社説>問題飲酒深刻 抜本的対策に取り組もう


この記事を書いた人 琉球新報社

 不適切な飲酒習慣が健康に害を与えることは知られていた。だが、アルコールの影響を受けた受診者のために救急医療業務が圧迫されているとなれば、個人の健康問題では済まされない。背景にある問題飲酒の解決に向け、県民の意識が問われる事態だ。

 若年層からの習慣化防止や適切な飲酒の在り方など抜本的な対策に県民挙げて取り組む必要がある。
 県立南部医療センター・子ども医療センターによると、2016年度に酩酊(めいてい)状態の人が159人、延べ392回受診した。受診者の中には医師に暴言を吐いたり、暴力を振るう事例も複数回あった。
 1年で44回来院するなど、酔って病院に世話になることが日常化していることをうかがわせる例もあった。同センターは警備員増員などの対応を取っている。
 本来なら救急医療は突発的な事故や急変した患者に対応するものだ。「ここでしか救えない命」(梅村武寛救命救急センター長)のために設けられている。
 アルコールの影響により、心身の悪化を訴える受診者の中には症状によって急を要する者もいるだろう。だが、そもそも酒を飲まなければ病院に行く必要がなかったはずの人でもある。
 アルコールの影響が県民生活にも影響を及ぼす恐れが示されたのだ。社会全体の問題として問題飲酒を減らす努力が求められている。
 同センターの事例は氷山の一角かもしれない。
 県は14年12月~15年3月に、初めて全県的な飲酒実態調査を実施した。調査結果によると、県内男性でアルコール依存症の疑いとされるのは14%で全国5・3%の約2・6倍、女性は4・5%で全国0・6%の約7・5倍と高い数値を示した。依存症の疑いには至らないが、生活習慣病につながる問題飲酒も男性が全国の約1・8倍、女性が約5・7倍と多い。
 調査では(1)飲酒機会こそ多くないものの一度に大量に飲む(2)約3割が未成年で飲み始めている-などが分かっている。結果から言えるのは、県民は若いころから飲酒が習慣化し、酒との付き合い方が下手な人の割合が多いことだ。
 過度の飲酒は生活習慣病の増加につながる。自ら命を縮めていると自覚すべきだ。
 解決すべき課題は多い。特に若年層への啓発は重要だ。
 那覇少年鑑別所の調査では入所者の飲酒が習慣化したのは平均14・8歳で、親が容認、黙認している例もあった。県北部福祉保健所の調査では、本島北部の高校生のうち、中学生で初めて飲酒した生徒が42・7%もいた。
 大人が責任を持って対処しなければならない。放置すれば、健康面でも社会的にもリスクは高まるばかりだ。
 「薬も過ぎれば毒になる」という。百薬の長を毒にしないためにも、お酒との付き合い方を一人一人が考えたい。