沖縄平和運動センターの山城博治議長がスイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で声明を発表した。米軍北部訓練場のヘリパッド建設工事を巡る反対運動中に逮捕され、5カ月にわたって長期勾留されたことについて「私は自供と抗議行動からの離脱を迫られた。当局による明らかな人権侵害だ」と訴えた。
捜査当局が山城氏への取り調べで、抗議行動からの離脱を求めたなら、表現の自由を侵害する越権行為ではないか。逮捕が運動への弾圧であることを裏付けるものだ。
山城氏が最初に逮捕された容疑は有刺鉄線1本を切断したとする器物損壊罪だ。その後、傷害と公務執行妨害の容疑で再逮捕された。逮捕と同時に、山城議長が所属する平和運動センターの事務所などが捜索を受け、パソコンや記憶装置のUSBメモリーなどが押収された。捜査対象の主眼が運動組織にあると疑わざるを得ない。
山城氏の長期勾留中、保釈請求は10回以上も却下され、家族の接見も禁止された。この状況に国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが保釈を求めて緊急行動に取り組むなど、国内外の人権団体から批判が相次いだ。
山城氏が声明を発表した国連人権理事会では、日本政府の代表が反論声明を発表した。長岡寛介公使は「拘束は刑事手続法に従い、裁判所の許可も得た。法に基づく適正なもので、国際法違反はない」と発言している。
1988年の国連総会で採択された「被拘禁者人権原則」は「拘禁された者または受刑者と外部、特に家族や弁護人との間のコミュニケーションは、数日間以上拒否されてはならない」と定めている。山城氏は家族との接見を5カ月近く認められなかった。明らかに人権原則に反している。長岡公使発言は、日本がこの原則を無視すると世界に宣言したことになる。
国連はこれまでも、日本の司法制度にたびたび改善を勧告している。長期勾留や家族の接見禁止を認めた日本の裁判所の判断こそが国際社会から見ると異常ではないか。
言論と表現の自由に関する国連特別報告者のデービッド・ケイ氏も12日に国連人権理事会に提出した報告書で「不均衡な重い罪を課している」と指摘している。人権理事会とは別にジュネーブで開催された沖縄の基地問題と表現の自由に関するシンポジウムでも、ケイ氏は「軽微な罪にこれほどの圧力を与えるのか」と疑問を投げ掛けた。
新たな米軍基地の建設に反対する人々への圧力が強まる中、名護市辺野古では新基地建設が強行されている。山城氏が声明の最後で呼び掛けた言葉こそ、県民の多くの要求ではないだろうか。
「私は、日本政府が人権侵害を止め、新しい軍事基地建設に反対する沖縄の人々の民意を尊重することを求めます」