<社説>渡名喜村長逮捕 行政への疑惑 徹底解明を


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 人口約370人の島が揺れている。県警は渡名喜村発注の多目的拠点施設の電気工事に絡み、業者に対して入札に関する秘密を漏らしたとして、渡名喜村長の上原昇容疑者と那覇市の電気工事会社役員を官製談合防止法違反などの疑いで逮捕した。

 渡名喜村では2016年12月にも村教育委員会発注工事に関連する官製談合事件で前教育長らが逮捕された。前教育長と業者らは17年3月に官製談合、あっせん収賄などの罪で有罪判決を受けている。
 半年余りの間に、村三役のうち2人が逮捕される異常事態だ。事件の全容解明はこれからである。村行政と工事関連業者に長年の癒着構造があった疑いがある。
 県警の捜査による全容解明と同時に、残された渡名喜村職員は総力を挙げて談合につながる構造を明らかにしてほしい。「癒着」があるのであれば、根源から絶つ方策を示すよう自浄力に期待する。
 県警によると、上原容疑者は入札予定価格の決定権を持ち、事前に電気工事会社に価格を伝えたという。
 この工事は指名競争入札形式で行われ、予定価格約8千万円に対し、逮捕された会社が落札率99%を超える7980万円で落札した。
 各地の談合疑惑を追及する全国市民オンブズマン連絡会議によると、落札率95%以上は「談合の疑いが極めて強い」とされる。疑いが持たれている渡名喜村の入札も数字上は極めて疑わしい。
 住民の間には「(村発注工事で)同じ業者を何十年も使っている」と疑問視する声もある。指名入札制度はあらかじめ選定した少数の業者で実施される。条件を満たせば誰でも参加できる一般競争入札に比べ、談合が起きやすいことは全国オンブズマンなどが以前から指摘してきた。今後も疑惑を持たれないよう早く入札制度を見直すべきだ。
 一方で上原容疑者とともに逮捕された会社役員は渡名喜村出身で、2人は面識があったという。前教育長が逮捕された事件では、村出身の業者らでつくる親睦団体の存在が背景にあるとされた。産業に乏しい小規模離島で、出身者が協力し合うことは当然だ。だが本来は故郷の発展へ力を合わせることが目的だったはずだ。談合など不正の温床になってよいはずがない。
 一連の問題で、議会の監視機能が十分に働いたかも検証されるべきだ。高い落札率など手掛かりはあった。議員全員が住民代表の意識をより強くし、点検してもらいたい。
 人口減少が続く渡名喜村だが「自然あふれる豊かな環境や伝統文化」は島の誇りだ。上原容疑者自身が3期目の抱負で、それを生かした村づくりをすると明言した。
 今回のような形で注目を集めるのは住民としても不本意だ。村行政を正常化し、一刻も早く本来の豊かな島づくりに力を注げる環境を築いてほしい。