<社説>F35の県内初飛来 「自由使用」合意の破棄を


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 全ては「基地の自由使用」を認めた日米合同委員会合意「5・15メモ」に起因する。合意破棄を日米両政府に強く求める。

 米海兵隊の垂直離着陸型最新鋭ステルス戦闘機F35B2機が、在沖米軍基地で初めて嘉手納基地に飛来した。飛来中止を求める地元自治体の声を無視したことは、県民に対する米軍の決別宣言と受け止めるしかない。
 嘉手納基地では外来機の飛来が相次いでいるほか、移転したはずの旧海軍駐機場が使用され、米国内で実施していたパラシュート降下訓練も移転された。
 在沖米軍基地の機能強化が進み、「沖縄の負担軽減」に逆行する状況はまさに異常事態である。県民を軽視する米軍とそれを追認する日本政府に強く抗議する。
 住民生活に一切配慮しない米軍によって、周辺住民の負担は増す一方である。もはや嘉手納基地撤去を求めることでしか、県民の安全を守り、平穏な暮らしを実現することはできないのではないか。
 F35は離陸の際、より騒音が大きいアフターバーナー(推力増強装置)を使用した。嘉手納町の測定では屋良地区で、100・2デシベルを記録した。電車通過時のガード下のうるささに相当するほどの爆音の放置を許してはならない。
 日本政府は住民生活を守るため、実効性ある対応を取る責任がある。だが、嘉手納爆音訴訟で政府は責任を認めず、爆音を放置し続けている。住民の立場に立たない政府は、米軍の下請け機関と断じるしかない。
 米軍の言いなりを証明する一例が、1996年の日米合同委員会で合意した嘉手納基地の航空機騒音規制措置(騒音防止協定)である。
 協定には「最大限努力」「任務により必要とされる場合を除き」などの文言が並び、事実上何ら制限を設けていない。離陸の際に使用されるアフターバーナーも「できる限り早く停止する」としただけである。形骸化した現協定を破棄し、実効性ある新協定を締結しない限り、住民は米軍機の爆音禍から逃れることはできない。
 F35はオスプレイ同様、開発段階から事故が相次ぎ、安全性には疑問がある。米国内では5月以降、飛行中に低酸素症に似た症状をパイロットが訴える事例が5件あり、6月にはコンピューターシステムの不具合で、飛行を一時停止している。F35は欠陥さえ疑われる機種であり、飛来常態化は断じて認められない。
 米軍は嘉手納基地にF35の専用駐機場を整備する計画である。このままでは嘉手納基地、普天間飛行場、伊江島補助飛行場での運用が常態化することは目に見えている。
 嘉手納基地をはじめ在沖米軍基地の「自由使用」を認める状況に終止符を打つため、米軍の下請け機関から脱することを政府に強く求める。