<社説>下村氏200万受領 説明は尽くされていない


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 安倍晋三首相側近の「政治とカネ」を巡る疑惑が浮上している。

 自民党の下村博文幹事長代行が、文部科学相だった2013、14年に学校法人「加計学園」の当時の秘書室長から計11の個人、法人による政治資金パーティー券の購入代金計200万円を受け取ったと明らかにした。
 政治資金規正法は特定の政治団体のためにパーティーの対価として金銭を集め、団体に提供することを「あっせん」と定義。同一人物によるあっせんで集まった総額が20万円を超える場合、政治資金収支報告書にあっせんした人物の氏名や住所、職業のほか、集めた総額の記載を義務付けている。
 下村氏は会見で「元秘書室長が知り合いに購入を依頼した」「いずれも個人、企業が1社20万円以下で購入した。元秘書室長が取りまとめて現金を持参した」と説明した。
 この説明は元秘書室長によるあっせんを認めたということだ。あっせんの合計が20万円を超えているので、収支報告書にあっせんした元秘書室長の氏名と合計額を記載していないなら法律に抵触する。
 下村氏は政治資金規正法の規定を盾に、誰がパーティー券を購入したか名前を明かさなかった。学園側は「献金をしたことはないし、パーティー券を購入したこともない」とコメントした。
 学園は購入していないのに、なぜ元秘書室長がパーティー券代金を取りまとめる窓口になったのか。下村氏は購入者を明らかにして、説明責任を果たさなければ疑惑は晴れない。
 首相の友人が理事長を務める加計学園の問題を巡っては行政の公平性に疑問符が付いたままだ。萩生田光一官房副長官が加計問題に関与したとされる記録文書が問題になり、今度は下村氏と加計側との現金のやりとりが明らかになった。
 下村氏は首相の出身派閥の細田派に所属。第1次安倍政権で官房副長官、第2次政権以降は文部科学相や総裁特別補佐など要職を歴任した。
 民進党の野田佳彦幹事長は「安倍晋三首相と、側近中の側近の下村氏と萩生田氏が三位一体となって『加計ありき』で行政をゆがめた疑惑が深まっている」と指摘した。首相は臨時国会を召集して下村氏の疑惑、稲田朋美防衛相の自衛隊の政治利用発言について、自らの見解を明らかにすべきだ。
 一方、今回の疑惑は、政治資金規正法の問題点を浮き彫りにした。政治資金パーティーは20万円を超えなければパーティー券の購入者の氏名は公開されないなど、政治献金に比べて規制が緩く、不透明さが指摘されている。
 この際、購入者の公開基準を引き下げるか、民進党が主張するパーティー券購入を含む企業・団体献金を全面禁止するなど規正法改革案を真剣に議論するよう求める。