<社説>ヘリ着陸帯工事再開 本当に新設必要なのか


この記事を書いた人 琉球新報社

 政府は1日、米軍北部訓練場内のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設工事を再開した。日米両政府は昨年12月22日、ヘリパッドが「完成」したとして、訓練場の約53%に当たる4010ヘクタールを日本側に返還している。駐日米大使や官房長官、防衛相らが名護市に集まって盛大に返還式典も開催したはずだ。それなのに、なぜ工事を再開するのか。つまり「完成」などしていなかったからだ。

 ヘリパッド建設は1996年の沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、北部訓練場約7800ヘクタールの過半を返還することに合意したことに起因する。その際、訓練場内にあるヘリパッド22カ所のうち、返還区域の7カ所の代替として、存続区域に6カ所のヘリパッドを新たに建設することが条件になった。うちN4地区と呼ばれる2カ所は2013年2月と14年7月に完成している。
 防衛省は当初、新設の着陸帯6カ所全てが完成した後、米軍に一括して提供する予定だった。しかし反対運動で計画に遅れが生じたことから、完成した2カ所を15年2月に先行提供している。
 そして残り4カ所の工事が昨年7月から始まった。反対運動はさらに高まり、工事を予定通り進めることができず、返還式典までに全ての工事を完了できなかった。円形状の着陸帯部分だけしか整備できず、歩行訓練道は今年2月になって完成している。
 その後、残りの工事は中断していた。3月1日から6月末までは国の特別天然記念物ノグチゲラの営巣期に当たり、重機を使う工事を控えなければならなかったからだ。1日から再開された工事はH地区の着陸帯からG地区の着陸帯までの進入路の整備で、約3カ月後の9月末に完成させるという。
 結局、日米両政府が「完成」を宣言してから、9カ月も後になって初めて完成することになる。その間、米軍は返還された7カ所のヘリパッドは使用できない。さらに新設の4カ所も完成していないので使用できない。
 すると米軍は1年の4分の3に当たる長期にわたって、少なくとも4カ所のヘリパッドが不足したまま基地を運用していることになる。米軍は新たなヘリパッドを6カ所も本当に必要なのか。そんな疑問が湧いてくる。
 工事費も増加を続けている。当初は約6億1千万円だったが「警備費」の増額で合計94億4千万円に上っている。15倍にも膨れ上がっており、巨額の公金が投じられる意味が果たしてあるのか。
 新設される6カ所は高江集落の住宅地を取り囲むような場所に位置する。頻繁に離着陸で利用されることになれば騒音などで住民生活に悪影響が及ぶのは必至だ。ノグチゲラの営巣期に配慮するのなら、人間が人間らしい生活を送られるよう、建設そのものを断念すべきではないのか。