<社説>都議選で自民惨敗 政権のおごりへの批判だ


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 小池都政への信任だけではない。安倍政権のおごりに対する強い批判が首都決戦で示されたのである。

 東京都議選は、小池百合子知事の率いる地域政党「都民ファーストの会」が自民党に代わって第1党となり、公明党などを合わせた支持勢力で過半数を獲得した。
 自民党は安倍政権の強引な国政運営が影響し、現有57議席を大幅に減らした。民意に向き合わない「安倍1強」政治に、都民は「ノー」を突き付けたということだ。
 安倍政権は監視社会につながる「共謀罪」法を参院法務委員会での採決を省略する異例の手続きで成立させた。安倍政権の国会軽視、国民軽視の姿勢に、都民は敏感に反応したのである。
 連立を組む公明党からは今年初め、「世間の評判が悪い法案を無理に通せば、その後の都議選でしっぺ返しを受けかねない」との声もあった。それが現実のものとなった。
 安倍首相の友人が理事長を務める「加計学園」の獣医学部新設問題では、数々の疑惑が浮上した。にもかかわらず、安倍首相は真相究明に後ろ向きな姿勢に終始した。森友学園問題もそうだ。
 通常国会閉会を受けた会見で、安倍首相は加計学園問題について「指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしていく。国会の閉会、開会にかかわらず、分かりやすく丁寧に説明していきたい」と述べた。だが、野党が求める閉会中審査に応じていない。
 安倍首相の言う「丁寧に説明」は沖縄の米軍基地問題同様、「民意を無視する」との意味にほかならない。都民、そして国民はそれを見抜いているのである。
 稲田朋美防衛相は都議選の応援演説で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と訴えた。その後、「誤解を招きかねない」として発言を撤回したが、発言を聞いた側が誤解したとする姿勢は、国民の目には傲慢(ごうまん)に映った。それも自民党惨敗の要因である。
 だが、それ以上に稲田防衛相の度重なる暴言、失言をかばってきた安倍首相への反発が、大きく影響したのではないか。
 安倍首相は都議選での自民党惨敗を受け、内閣改造と党役員人事の早期実施を検討するようである。もはや内閣改造などで済む話ではない。閣僚の顔ぶれを代えたとしても、安倍政権への国民の不信感は到底解消されない。政治不信に拍車を掛ける効果しかもたらさない。
 都議選の結果に見られるように、安倍政権は国民の信頼を失っているのである。国会を解散し、国民に信を問うしかない。
 安倍首相は麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官らと選挙結果を「謙虚に受け止めなければいけない」との認識で一致した。言葉だけでなく、行動で示すべきだ。解散の早期断行を強く求める。