<社説>深刻な保育士不足 待遇改善で人材確保を


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 全国2位の待機児童数が社会問題となる中、県内の深刻な保育士不足の実態が改めて数字で明らかになった。県が6月に各市町村に調査したところ、認可保育園で必要な保育士が188人不足し、全体で子ども695人が入所できなかった。

 県は計画を立てて待機児童解消に向けて取り組んでいるが、保育施設や定員増に保育士の確保が追い付いていないのが実情だ。待遇改善に向けた対策を急ぐ必要がある。
 保育士が不足しているのは19市町村の90施設。県全体の認可園622施設の約14%に当たる。4月1日時点の県内の待機児童は2253人。保育士が確保できていれば、このうち3人に1人は保育所に入所できた計算だ。
 市町村別では、最多の那覇市が54人不足、次いで名護市17人、浦添市と八重瀬町が14人ずつだった。
 那覇市では4月時点で定員割れの園がある一方、保育士不足で受け入れができなかったクラスが49クラスあった。豊見城市でも入園が内定していた10人が、保育士不足が原因で転園などを余儀なくされた。子どもを預ける親にとっては切実な問題だ。
 保育士が不足している最大の理由は、待遇の悪さだ。辞めた保育士を対象にした県の13年度調査では、保育所に就職しない理由の1位が「仕事の大変さの割に給料が安い」で53%と半数を超えた。
 保育士の業務量は多い。勤務時間内だけでは終わらず、年間行事の準備などを家庭に持ち帰ることも多いという。
 厚生労働省が2016年に算出した県内保育士の平均月給(賞与や残業代を除く)は19万8千円で、全産業平均25万3千円の78%にとどまる。
 県内保育士の約4割が非正規雇用という背景もある。県は15年度から正規雇用化促進事業に取り組んでいて、年間150人を正規雇用にする目標を掲げるが、数字を見る限り、届いていない。
 課題は給与だけではない。厚労省が6月に発表した調査では、精神的ケアが必要な保育士のいる施設が全国で27%に上ることが分かった。
 保育士は、小さな子どもの安全を守る心理的負担や、保護者を含む人間関係での悩みを抱えやすいといわれる。にもかかわらず、相談窓口などのサポート体制が整っていない施設が58%もあった。小規模施設が多い県内でも、心のケアへの対応が不十分な施設はあるのではないか。
 翁長雄志知事は17年度末までの待機児童ゼロを公約に掲げた。しかし県議会で「1年延びる可能性がある」との見解を示し、達成は厳しい。
 県内には、資格を持ちながら保育の仕事に就いていない「潜在保育士」が1万人余いる。復職支援を一層進めて、必要な人材を確保すべきだ。
 保育士の待遇改善は子育て支援策の最優先事項だ。子どもの割合が全国一多い沖縄が有効策を示してほしい。