<社説>那覇空港第2滑走路 軍優先の問題に切り込め


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 滑走路は2本になるのに飛行機の発着はわずか1・17倍にしかならない。なんとも増設に見合わない那覇空港の第2滑走路の発着数が明らかになった。

 国土交通省大阪航空局は那覇空港第2滑走路の完成後、航空機が発着できる能力(滑走路処理容量)を年18万5千回と算定した。2015年度に1本の滑走路で発着した回数が15万7千回で、比較すると1・17倍にしか伸びない。
 那覇空港の滑走路は2本が十分な間隔を開けて並行するオープンパラレル方式で、本来は2本で同時に発着できる。しかし処理容量が2倍にならないのは三つの要因がある。
 最大の要因は空港北側に米軍の嘉手納飛行場への進入経路があることだ。北向けの離陸または北からの着陸には米軍の進入経路を避け、千フィート以下の高度制限の中、西寄りにカーブした進路を取らねばならない。その航空機が飛行経路を横切る間は第2滑走路からの発着ができない。
 2点目は旅客ターミナルの位置だ。第2滑走路を使う航空機がターミナルと行き来をするには現滑走路を横切る必要があり、その間は現滑走路は使えない。
 3点目は自衛隊機の使用の増加だ。那覇空港は自衛隊との共用で、自衛隊機による緊急発進(スクランブル)の増加などで過密化に拍車が掛かっている。
 日本復帰によって管理権が米軍から日本に移った際、沖縄は民間専用化を望んだがかなわなかった。自衛隊機の発着が過密度を押し上げ、自衛隊用地の存在が空港整備を難しくしてきた。
 那覇空港の16年度の旅客数は前年度比8%増の2003万6318人と過去最高を更新した。国が13年度に策定した需要予測は30年度に最大1928万人だったので、既に予測を超えた。貨物も同4・4%増の41万7077トンと過去最高だ。ヒト、モノの動きが拡大し、好況を生んでいる。
 そもそも那覇空港は国管理空港で、整備費は国交省が計上すべきだった。が、第2滑走路建設費は沖縄関係予算から支出している。当初、県も抵抗したが、早期に那覇空港整備を図るためとして沖縄関係予算に組み込まれた経緯がある。
 第2滑走路はいわば、沖縄振興の他の費目に使われるべき予算から捻出して造られている。それだけに増え続ける需要に対応し、沖縄振興に資するものでなくてはならない。
 米軍機の飛行が優先され、那覇空港では自衛隊機の発着が過密化に輪を掛ける。広大な土地を占有するだけでなく、空の民間利用も阻む状況はまさに「基地は沖縄振興の阻害要因」だ。
 20年の開港までに、軍が優先される那覇空港の根本的な問題を解決しなければならない。国、県は課題に切り込むべきだ。