<社説>北朝鮮ICBM発射 国際社会は外交力発揮を


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 ティラーソン米国務長官は北朝鮮が発射した「火星14」が大陸間弾道ミサイル(ICBM)だったことを明らかにした。

 北朝鮮には朝鮮半島の軍事的な緊張を高める挑発を即刻中止するよう強く求める。ドイツで開幕する20カ国・地域(G20)首脳会議で、北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させるため連携して外交的圧力を強化する必要がある。
 ICBMは、大海をまたいで大陸間を飛行できる陸上発射型の弾道ミサイルで、戦略核の運搬手段となる。一般に射程5500キロ以上を指す。米国、ロシア、中国が配備している。
 米NBCテレビによると、北朝鮮が4日に発射した弾道ミサイルは通常の軌道であれば射程約5600キロ以上で、米アラスカ州に到達する能力があるとみられる。自衛隊幹部は米ハワイに届く可能性もあるとの見方を示している。
 CNNテレビは米政府当局者の話として、北朝鮮が発射したのは2段式のICBMの可能性があると伝えた。
 北朝鮮はこれまでも危機を演出することで有利な交渉を行おうという戦術をとってきた。米シンクタンク、核脅威削減評議会(NTI)などによると、約14年間の故金正日総書記体制での発射実験は16回だったが、金正恩体制下では5年余りで80回に達した。
 今回もトランプ米政権に米本土への攻撃能力を誇示し、「敵視政策」の撤回や平和協定の締結、米韓合同軍事演習の中止を米国に突き付けるとみられる。
 しかし、あまりにも危険な挑発行為である。米本土を狙うICBM発射はトランプ政権にとってレッドライン(越えてはならない一線)とみられてきた。トランプ政権は北朝鮮への軍事力行使も排除しないとの立場を表明している。その場合、米軍が駐留する沖縄への影響も避けられないだろう。
 あくまでも外交力を発揮して問題を解決すべきである。米中は4月の首脳会談で、北朝鮮の核・ミサイル開発抑止への協力を強化することを確認した。だが今、米中の足並みは乱れている。
 中国は北朝鮮への石油供給制限などの強硬策に踏み切っていない。北朝鮮が混乱すれば中国に難民が流入することを恐れているとみられる。北朝鮮の不安定化を懸念する中国が北朝鮮を追い込むことを避け続ければ、現状を打開できない。
 米韓両政府は6月末、トランプ大統領と文在寅大統領が首脳会談した。北朝鮮の脅威などに対処するため日本を含む3カ国の連携強化の重要性を強調、ドイツで7日に開かれるG20首脳会合に合わせて日米韓首脳会談を開く方針を表明した。
 日米韓は北朝鮮に影響力のある中国、ロシアにも働き掛け、北朝鮮への石油禁輸だけでなく、最大限の外交的圧力をかけるよう結束すべきだ。