<社説>MICE施設停滞 インフラとして不可欠だ


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 2020年9月の供用開始を目指す大型MICE施設建設計画が停滞している。内閣府が採算性などを疑問視し、一括交付金を活用できるめどが付いていないのである。

 一括交付金は国民の税金であり、内閣府が慎重になることは理解できる。だが、大型MICE施設が道路と同じ「経済の基本インフラ」ということは、世界では常識である。採算性に過度に重きを置かず、インフラ整備の視点で前向きに検討してほしい。
 県も内閣府の理解を得るため、採算性を超える大きな経済効果を、これまで以上に丁寧に説明してもらいたい。
 県は、春先にも一括交付金の交付決定を受けて基本・実施設計などの作業を進め、18年度から着工する計画だった。膠着(こうちゃく)状態が続けば、県の計画は大きく狂いかねない。
 内閣府は経済効果の根拠や、施設の需要見通しなどの提示を求めているという。
 県がまとめた15年の県内MICE開催実態調査によると、開催件数は前年比14・0%増の1166件で、調査を始めた11年以降最高を更新した。経済効果は14・2%増の193億円に上り、調査初年の130億円と比べ48・5%も増加している。
 大型MICE施設が完成し、大規模な展示会・会議などが加われば、さらに伸びることは確実だ。MICEは一般の観光より経済効果が高い。参加者の滞在期間が比較的長く、経済・消費活動の裾野が広いためである。それだけではない。海外企業が沖縄を訪れることで新たな商機が生まれ、沖縄のブランド力の向上にもつながる。
 沖縄は大型MICE施設がないために、大規模な展示会などが開けていない。国内最大規模の国際食品商談会「沖縄大交易会」でさえ、会場の沖縄コンベンションセンターの収容能力の関係で規模拡大ができない。参加企業の多さが商談会の大きな魅力になることを考えれば、大型MICE施設の建設は不可欠だ。
 世界では1万種の見本市が開かれているという。県には既に国内外の企業などから問い合わせがあるという。大型MICE施設の需要は確実にあるのだ。
 世界最大級の観光総合見本市「ツーリズムEXPOジャパン」は20年に沖縄で開催される。16年EXPOには140カ国から1181企業・団体が出展し、3日間で計18万6千人が来場した。沖縄での会場は未定だが、大型MICE施設でしか開催できない。
 大型MICE施設が整備されるマリンタウン地区の与那原町と西原町、周辺の南城市、沖縄市、うるま市、北中城村、中城村が今月、中城湾地域振興協議会を設立する。設立準備会では観光振興に力を入れることを確認した。
 大型MICE施設は沖縄の成長エンジンになり得る。その施設を核に経済振興を目指す沖縄の新たな挑戦を内閣府も全面的に支援してほしい。