<社説>嘉手納基地撤去言及 合意守れぬ米軍は撤退を


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 翁長雄志知事と嘉手納町、沖縄市、北谷町でつくる「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)の3首長が政府に対し、米軍嘉手納基地の旧海軍駐機場の使用禁止とパラシュート降下訓練の禁止を求めた。県は要請文書で「嘉手納飛行場の使用、ひいては日本の安全保障体制に影響を与える恐れがあると危惧する」と記し、同基地の撤去運動を示唆した。

 県が要請で嘉手納基地存続危機の可能性に触れるのは初めてだ。県と三連協の首長が一緒に政府に要請するのも極めて異例だ。それだけ県も三連協も最近の米軍による野放図な嘉手納基地の運用に、強い危機感を抱いている。
 日米両政府は2011年、嘉手納基地所属機の訓練移転に合意した。住民の負担軽減が名目だ。ところが今年だけでも5月に米コロラド州バックリー空軍基地のF16戦闘機12機と在韓米軍の烏山空軍基地のU2偵察機4機が相次いで暫定配備された。
 さらに6月に岩国基地所属の最新鋭ステルス戦闘機F35Bが初飛来し、その後も離着陸を繰り返している。騒音が増大している現状をみれば、嘉手納所属機が別の場所で訓練する以上に、嘉手納基地に飛来する外来機の方が圧倒的に多いはずだ。
 旧海軍駐機場は住宅地域への騒音被害軽減を目的に、1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で移転が決まった。そして2017年1月に主要滑走路の反対側に移転が完了した。
 しかし2月にKC135空中給油機が旧駐機場を使用し、5月にはU2偵察機が使用した。つまり米軍は新たな駐機場と旧駐機場の双方を使用しているのだ。これでは騒音被害軽減どころか騒音被害増大、機能強化ではないか。
 最終報告では読谷補助飛行場で実施されてきたパラシュート降下訓練を伊江島で実施することに合意した。ところが07年、日米は嘉手納基地の「例外的な場合に限って使用」にも合意した。
 今年になって嘉手納基地での降下訓練は4月に実施され、5月には夜間訓練が強行された。天候不良で中止されたが、米軍は6月にも夜間訓練を予定していた。これでは恒常的ではないか。稲田朋美防衛相も6月に予定された夜間訓練について「例外に当たるとは判断していない。大変遺憾なことだ」と批判した。
 旧駐機場の使用について米軍は「09年の日米合同委で運用の必要性に応じて使用することに同意した」としている。しかし日本は「日米間で合意しているという事実はない」として米側に抗議した。
 米軍は日米合意という約束をことごとく反故(ほご)にし、誰の話にも一切聞く耳を持たぬまま、嘉手納基地を好き勝手に運用したいようだ。県民はたまったものではない。県が要請文書で示唆したように、米軍には嘉手納基地から出て行ってもらうほかない。