<社説>加計問題国会審査 首相は「説明責任」実行を


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 政府側は説明責任を一切果たしていない。安倍晋三首相が出席した予算委員会の集中審議と、関係者の証人喚問の早期実施を強く求める。

 安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡る国会の閉会中審査が衆参両院で開かれた。
 参考人招致された前川喜平前文部科学事務次官は「背景に官邸の動きがあった」と首相官邸の関与を強調した。一方、萩生田光一官房副長官はこれまで同様、関与を否定した。疑惑は何ら解明されずに審査は終了した。
 前川氏が理路整然と説明したのに対し、政府側は不誠実な対応に終始した。働き掛けや指示をただ否定するだけで、その根拠らしきものは「記憶はない」だけである。
 文科省の調査で確認されなかった「10/7萩生田副長官ご発言概要」と題する文書について、前川氏は「担当課から受け取った」と主張した。この文書には「文科省だけでこの案件をこなすのは難しい」「私の方で整理しよう」などの記載があるが、萩生田氏は「発言をした記憶はない」と否定した。
 10年前の話ではない。昨年10月のことである。1年もたたないにもかかわらず「記憶はない」とは信じ難い。発言していないと断言しなかったことで、国民の疑念はさらに深まったのではないか。
 前川氏が「さまざまな動きをしていた」とする和泉洋人首相補佐官の参考人招致を与党は拒否した。前川氏によると、和泉氏は昨年9、10月の2回、「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」などと計画推進を要請した人物である。
 与党が「キーパーソン」を出席させなかったのは、前川氏の証言が事実だからではないのか。不都合な事実を隠すこと以外の意図はなかろう。
 東京都議選で自民党が歴史的惨敗を喫したのは、政府与党が加計問題などで疑惑隠しに終始したことが大きな要因である。和泉氏の招致拒否は自民党が何ら反省しておらず、隠蔽(いんぺい)体質に変わりがないことを自ら証明したと言うほかない。
 加計学園の計画が4条件を満たしているかの疑問に、山本幸三地方創生担当相は「できない理由を探すのではなく、どうしたらできるかを前向きに議論すべきだ」と説明した。まさに「加計ありき」ではないのか。
 加計学園の獣医学部新設で「総理の意向」があったのかは依然、闇の中である。これで幕引きにしては、国民の政治不信はますます増幅する。
 何が事実なのかが明らかにならなければ、国民は納得しない。安倍首相は通常国会閉会を受けた会見で「指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしていく。国会の閉会、開会にかかわらず、分かりやすく丁寧に説明していきたい」と述べた。国民との約束を直ちに実行すべきだ。