<社説>新着陸帯運用開始 「負担軽減」と言えるのか

 米軍は、東村と国頭村に広がる北部訓練場のN1地区とH地区にある新たなヘリパッドの運用を始めた。

 新設されたヘリパッド6カ所は、東村高江集落を取り囲んで建設された。住民生活への影響を最小限に抑える考えがあるなら、集落近くに新設することなどあり得ない。これでは負担が軽減されるどころか、増す一方である。
 普天間爆音訴訟などで、政府側は「住民は自ら基地の危険に接近した」と事実に反する主張を繰り広げた。危険なヘリパッドを住民地域に接近させたことを政府はどう説明するのか。先に住んでいたのは、ここでも住民の方だ。
 今後、オスプレイをはじめ、米軍機の訓練が増えることは間違いない。運用を優先する米軍の姿勢からして、夜間・早朝の訓練抑制や騒音防止などの歯止めは一切期待できない。高江集落で騒音が増大し、住民生活に重大な影響を与えることは確実である。
 政府が米軍の思うがままの訓練を認めているため、昨年6月には先行提供したN4地区のヘリパッドで連日、オスプレイが午後10時以降に離着陸を繰り返した。ヘリパッド周辺では、夜間(午後7時~翌午前7時)の騒音発生回数は383回に上り、14年度の月平均16・2回の約24倍に激増した。
 その影響で睡眠不足に陥った児童らが学校を欠席する事態を招いた。ヘリパッド運用が次々始まれば、さらに深刻な事態を引き起こす。住民生活を破壊し、危険にさらす全ての訓練を直ちに廃止し、ヘリパッドを撤去すべきだ。
 住民をこのような苦境に追い込んだ責任は、政府にある。国民より米軍を優先する姿勢を政府が改めない限り、住民は劣悪な生活環境下に置かれ続けることになる。
 東村の伊集盛久村長は、沖縄防衛局から「進入路の建設が全て終えてから運用が開始される見込みだ」との説明を受けていた。進入路の工期は9月末までの予定である。東村は運用開始の際は事前に連絡するよう防衛局に求めていた。だが防衛局から東村と国頭村への連絡は事後である。
 だまし討ち的な運用開始は許し難い。最も被害を受ける地域に事前連絡さえできない状況も看過できない。
 軽視されているのは県民だけではない。防衛局も米軍に完全に見くびられている。強く抗議すべきだ。
 北部訓練場の過半に当たる4010ヘクタールの返還と引き換えにもたらされるものは、県民が指摘した通り住民地域近くでの危険な訓練と騒音である。政府はこれを「負担軽減」と胸を張る。安倍内閣の劣化は危機的状況にあると断じるしかない。
 高江住民の「ここに住めなくなるので飛ばないでほしい」との要望は、無理難題を政府に突き付けているのではない。住民の声に真摯(しんし)に向き合い、住民のささやかな願いを実現すべきだ。