<社説>担当相「四国に新設」 「加計ありき」 また一つ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 まさに「加計ありき」である。「行政がゆがめられた」疑いはさらに深まった。

 政府の国家戦略特区制度を活用した獣医学部新設計画で、学校法人「加計学園」が事業者に認定される約2カ月前の昨年11月17日、特区担当の山本幸三地方創生担当相が日本獣医師会に「四国で新設することになった」と伝えていたことが判明した。
 京都府での新設を目指す京都産業大も名乗りを上げていた。にもかかわらず、愛媛県今治市で四国初の獣医学系大学の新設を予定する加計学園を前提に、計画が進められたということである。
 山本氏は獣医師会関係者が明らかにした自身の発言について「獣医師会側の思い込みと私の発言を混同したもので正確ではない。私からは『京都もあり得る』と述べた」「獣医師会側は『四国の今治』と決めつけた言いぶりで対応していた」と反論した。
 たとえ面会記録の記述が「正確ではない」にしても、それ自体が山本氏の発言の意味するところをゆがめていることには必ずしもならない。
 面会前の昨年11月9日に開かれた特区諮問会議で獣医学部新設の方針が決まり、その条件として「広域的に存在しない地域に限る」ことが提示されている。「京都もあり得る」はずがない。
 大阪府内に獣医学系大学が存在するため、「広域的に存在しない地域」ではない京都府への新設は、あり得ない状況になっていた。獣医師会もそれを知っていたはずで、「四国の今治」と受け取って当然である。
 獣医師会によると、山本氏は「今治市が土地で36億円のほか積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった」と説明した。山本氏は「事業実施主体という表現をしており加計学園と特定したことは全くない」と否定している。
 獣医学部新設を希望していたのは加計学園と京産大だけである。仮に山本氏の言い分通りだとしても、今治市での「事業実施主体」が加計学園を指すことは誰の目にも明らかである。
 「加計ありき」の政府の対応は「獣医学部が広域的に存在しない」「新設は1校に限る」だけではない。内閣府が昨年11月に「2018年4月開学」の方針を公表する約2カ月前までに、開学時期が加計学園に伝わっていたとみられることが学園関係者への取材で明らかになっている。
 全てが加計学園に有利に働いたとしか見えない。安倍晋三首相の友人が理事長を務める加計学園に、獣医学部新設を認めた決定プロセスを「何ら問題はない」と考える国民はいまい。
 衆参両院の予算委員会での集中審議では、加計学園の加計孝太郎理事長ら全ての関係者の参考人招致が不可欠だ。「総理の意向」が働き、行政がゆがめられたのか。その徹底解明は政治の責任だ。