<社説>辺野古「人間の鎖」 平和希求の思い広げたい


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に抗議し、大浦湾の埋め立て阻止を訴える「人間の鎖大行動」が辺野古のキャンプ・シュワブ前で行われた。

 主催者発表で約2千人が参加し、手をつないで基地を囲んだ。新基地建設に多くの人々が「NO」の意思表示をした。政府はこの声に真摯に耳を傾けるべきだ。
 今月6日にはゲート前での建設反対の座り込みが3年を迎えた。これまで県内外から多くの人が現場に駆け付け、雨の日も炎天下の日も抗議行動を重ねてきた。それだけ反対の声が根強いことを示すものだ。
 ゲート前では連日、工事車両が基地内に入る際、機動隊が市民を強制排除し、機動隊車両の間に1時間近く閉じ込める行為を繰り返している。車両はエンジンがかかったままで、市民は閉じ込められている間、ずっと排ガスを吸わされることになる。
 この問題が県議会で取り上げられると、県警の警備部長は「排ガスを吸いたくなければ違法行為をやめていただくことかと」と答弁している。排ガスを吸わせることで座り込みをやめさせようというのか。人権感覚の欠如した答弁だ。
 海岸では現在、K9護岸とK1護岸と呼ばれる場所で砕石を積む作業が繰り返されている。積まれた砕石が海へと延びているが、K9護岸の延長線上の海底には30センチを超えるコブハマサンゴが確認されている。沖縄防衛局は移植対象となるサンゴ類は存在していないとの見解を示している。このサンゴを砕石の下敷きにして押しつぶそうとでもいうのか。環境破壊にためらいがないとしか思えない。
 国が県の許可を得ずに工事を進めるのは違法だとして、県は国を相手にした差し止め訴訟を24日に那覇地裁に申し立てる。同時に判決が出るまで工事を止めるよう求める仮処分も申し立てる。
 県は工事海域には漁業権が存在しており、埋め立て工事を進めるには知事による岩礁破砕許可が必要だと主張している。一方、国は名護漁協の決議で漁業権が消滅しており、岩礁破砕許可は不要だと主張している。
 しかし国は那覇空港第2滑走路建設工事では地元漁協が漁業権の消滅に同意した後、岩礁破砕許可の更新をしている。二重基準であり、矛盾しているではないか。
 新基地建設工事は人権侵害、環境破壊、手続き無視のまま突き進んでいる。許されるはずがない。人間の鎖大行動で参加者は波のように隣の人へと動きを伝える「ウエーブ」を展開した。「ノー・ベース・ヘノコ(辺野古に基地は要らない)」と声を合わせた。8月12日には新基地建設断念などを訴える3万人規模を目指す県民大会も予定されている。平和を希求する人々の思いを波のうねりのように広げたい。