<社説>那覇空港滑走路閉鎖 軍民共用は発展を阻害


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 自衛隊機のトラブルで、那覇空港の滑走路がまた閉鎖された。軍民共用は沖縄観光のイメージを傷付け、経済発展を阻害する。那覇空港の民間専用化を強く求める。

 那覇空港を離陸した航空自衛隊那覇基地所属のF15戦闘機の前脚部分の着陸灯ガラスが破損し、回収するために滑走路が47分間閉鎖された。民間機計26便に最大52分の遅延が発生したほか、4便が欠航し、5便が目的地を変更するなどの影響が出た。
 米軍嘉手納基地に着陸した民間機は窓を閉め、空調が切られた暑さの中で3時間以上足止めされた乗客もいた。那覇空港で運航再開を長時間待たされた観光客からは「疲れも出てきた。早く帰りたい」との声も聞かれた。これでは、沖縄観光の思い出も台無しである。
 国土交通省大阪航空局がまとめた2016年度の那覇空港の旅客数は、前年度比8・0%増の2003万6318人で、初めて2千万人を突破した。
 観光客の増加に伴い、那覇空港利用者は今後も増えるだろう。離島住民にとって那覇便は生活路線でもある。たとえ短時間でも滑走路が閉鎖されれば、運航スケジュールが過密なだけに観光客や県民に多大な影響を及ぼす。
 後を絶たない自衛隊機のトラブルがそれを証明する。今年1月にはF15の前輪が離陸前の「完全停止時」に脱輪し、滑走路が1時間50分閉鎖された。強い重量負荷がかかる離着陸時であれば、重大事故となる可能性すらあった。
 このトラブルで民間機欠航などで1万人近い利用客が影響を受けた。久米島町産の車エビ約1トンが出荷できず、約220万円の損失も出た。
 16年7月にはF15が滑走路のくぼみにはまり、滑走路が約40分間閉鎖された。離発着便56便で最大2時間46分も遅延が生じた。
 15年6月には、離陸滑走中に前方上空を空自ヘリコプターに横切られた民間機が離陸を中止し、その後、旅客機同士が衝突しそうになった。1985年5月には、空自機に接触された民間機のエンジン下部がもぎ取られる重大事故が発生した。あわや大惨事の事態もあったのである。
 20年運用開始を予定する那覇空港第2滑走路が完成した後も、航空機が発着できる能力(滑走路処理容量)は現状の1・17倍にしか増えない。自衛隊機の使用が増加傾向にあることも一因である。
 那覇空港は民間機だけでも過密な状況にある。だが防衛省は16年1月末、空自部隊を再編し、那覇基地のF15をそれまでの20機を40機体制にした。F15が倍増したことで、トラブル発生のリスクは高まっている。
 軍民共用であり続ける限り、重大事故発生の危険性は排除できない。利用者の安全を第一に考え、那覇空港を民間専用にすべきだ。これ以上の危険性放置は許されない。