<社説>稲田防衛相辞任 疑惑「徹底解明」に程遠い


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 まったく遅きに失し、疑惑解明にも程遠い。第三者の調査を求める。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題に関し、稲田朋美防衛相が説明責任を果たさないまま辞任した。
 28日に公表された防衛省の特別防衛監察結果は、稲田氏が2月13、15日、防衛省幹部らから陸上自衛隊の日報に関する説明を受けたと認定。その際、陸自側から日報のデータ保管の報告もあった可能性は否定できないとした上で、保管の事実を非公表とする方針を了承した事実はないと結論付けた。
 この結論は、稲田氏が非公表を了承したとする複数の政府関係者の証言と異なる。稲田氏への聴取はわずか1時間だった。最初から「関与なし」を前提とした監察だったのではないかと疑いたくなる。「徹底した事実解明」を約束した稲田氏の言葉を裏付けたとは言い難い。
 防衛相の指揮下にある防衛監察は公平・中立性が確保されないことは明らかだ。稲田氏が隠蔽(いんぺい)への関与を認めず、遅過ぎた辞任で幕引きを図ろうとする姿勢は許されない。
 日報問題は、南スーダンの首都ジュバで大規模戦闘が起きた昨年7月、現地部隊が日々の活動や治安情勢を報告するために作成した日報の情報公開請求を、防衛省が同10月に受理したことに端を発する。「陸自は廃棄済み」として不開示決定した。その後、陸自内部にデータが残っていたことが判明したが非公表とし、データを消去していた。
 防衛省・自衛隊にとって都合の悪い文書を、なかったことにして廃棄したことが問われているのである。組織ぐるみの隠蔽体質は国民に対する背信であり、違法性が高い。
 この隠蔽体質から自衛隊への文民統制(シビリアンコントロール)が機能していないことが分かる。文官トップの事務次官自ら「個人の保存文書」「公文書に当たらない」と判断し、非公表の方針が了承された。制服組と文官が「暴走」したのだ。
 「暴走」を統制できなかったのは、組織の問題と稲田氏が大臣としての資質に問題があるからである
 PKO日報に政府軍と反政府勢力の抗争を「戦闘」と表現されていたことを問われると「法的な意味での『戦闘行為』はなかった」と強弁。「(戦闘行為が)行われたとすれば9条の問題になるので、武力衝突という言葉を使っている」と憲法軽視の発言をした。
 東京都議選の応援で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と発言し自衛隊を政治利用した。
 度重なる失言で野党が罷免要求しても安倍晋三首相は稲田氏をかばい続けた。「1強」のおごりの表れである。首相の任命責任と混乱を招いた責任は重い。内閣改造で目先を変えようとするのではなく、安倍首相も辞任して国民に信を問うべきである。