<社説>全国知事会 沖縄の現状理解広げたい


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 2008~15年の8年間に在日米軍人・軍属とその家族による犯罪摘発件数が沖縄県だけで全国の総数の47・4%を占めていることが分かった。全国知事会に設置されている米軍基地負担に関する研究会のまとめで判明した。

 全国47都道府県のうち、1県だけで全体の半数近くの米軍関係犯罪が摘発されている実態は、沖縄への過重な基地集中を意味する。
 基地に起因する事故、騒音や環境汚染などの基地公害に加え、治安悪化という大きな負担も県民が背負わされている。基地の過重負担を解消しなければ、こうした状況は今後も続くことになる。たまったものではない。
 研究会は16年7月に設置された。翁長雄志沖縄県知事の「沖縄の基地問題をわがこととして真剣に考えてもらうようお願いしたい」との要望を受けてのものだ。これまで3回の研究会を開催し、沖縄の基地負担の現状や日米同盟などについて問題意識の共有を重ねている。
 28日に岩手県で開催された全国知事会議ではこのほか、在沖米軍基地の現状や跡地利用の経済効果などの報告があり、研究会座長の上田清司埼玉県知事が「基地関連収入の比重は大幅に低下しており『沖縄は基地の経済でもっている。基地とは離れられない』という話は誤解だと共通認識を持てるのではないか」と指摘した。全国知事会のこうした沖縄への理解を深め、誤解を解く取り組みを高く評価したい。
 全国知事会だけでなく、沖縄の基地問題に取り組む全国的な動きが出ている。全国都道府県議会議長会が25日の総会で、米軍普天間飛行場の「5年以内の運用停止」の確実な実現要求を盛り込んだ議案を採択した。沖縄側からの提案に呼応したものだ。
 「5年以内の運用停止」は13年、当時の仲井真弘多県知事が要請し、安倍晋三首相が「最大限実現するよう努力したい」と受け入れた約束だ。しかし首相は翁長知事が名護市辺野古への新基地建設に反対していることを理由に実現困難との姿勢に転じた。
 47都道府県の議会議長のうち42人が政権与党の自民党所属だ。全国議長会で「5年以内」が都道府県議会の総意として採択された意義は大きい。
 一方で、まだ認識を全国で共有できていない動きもみられた。今年2月の全国町村議会議長会で、沖縄側から基地関係協議会の設置を求める動議が出されたが、賛成8、反対37で否決された。議長会の国への要望活動に影響することを懸念したためだ。極めて残念だ。
 全国知事会の研究会は10月後半以降に、日米地位協定を主題に会議を開く予定だ。翁長知事が求めた「沖縄の基地問題をわがこととして真剣に考えてもらう」取り組みが知事会にとどまらず、今後も各界に広がるよう期待したい。