<社説>籠池夫妻逮捕 「神風吹いた」徹底解明を


この記事を書いた人 琉球新報社

 学校法人「森友学園」前理事長の籠池泰典(本名・康博)容疑者と妻諄子(本名・真美)容疑者が国の補助金をだまし取ったとして、詐欺の疑いで逮捕された。

 夫妻逮捕で森友問題の幕引きとしてはならない。国有地がなぜ8億円余りも値引きされたのか、安倍晋三首相や昭恵首相夫人、政治家の関与はなかったのか。多くの疑問は依然、闇の中である。全容解明を大阪地検特捜部に強く求める。
 森友学園が大阪府豊中市で開校を予定した小学校の用地となった国有地が、格安で売却された問題が今年2月に発覚した。森友学園による当初の「安倍晋三記念小学校」計画や昭恵夫人の名誉校長就任は、学校開設への不公平な手続きを疑わせた。昭恵夫人付き政府職員が国有地について学園の要望を受け、財務省に照会していたことも明らかになっている。
 数々の疑惑が国会で追及されたが、昭恵夫人の参考人招致は実現せず、不透明感は残ったままである。
 籠池容疑者によると、昭恵夫人は夫妻と共に小学校建設用地を視察し「何かできることは」と協力も申し出たという。森友学園が運営する幼稚園での講演会では「こちらの教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っている」と評価していた。
 籠池容疑者は2015年9月に昭恵夫人から「安倍晋三からです」と100万円の寄付を手渡されたと主張している。その頃から小学校設立計画がとんとん拍子に進み、籠池容疑者は「神風が吹いた」と振り返っていた。安倍政権側の意向で「神風が吹いた」のかについても、特捜部には切り込んでもらいたい。
 財務省は評価額の14%での売却を適正だと主張してきた。到底認められない。
 「9メートルぐらい」の深い地中から「ごみが出た」とする学園側の申告を受けた近畿財務局は、ごみ撤去費など8億円余りを引いた約1億3400万円で売却した。だが、籠池容疑者は今年5月、深さ3メートルより下の地中には「廃棄物はない」とする業者のメールを公表している。
 財務省が国有地取得に必要な手続きを詳細に示した文書を作成し、学園側に渡していたことも判明している。文書には売買契約締結までの手続きが記され、籠池容疑者は「近畿財務局が一式用意してくれた。土地取引がスムーズに行くと安堵(あんど)した」としていた。学園を特別扱いし、優遇していたことが疑われる。
 特捜部は、学園と交渉した近畿財務局関係者に対する背任容疑の告発も受理している。徹底的な真相究明を求めたい。
 政府はこの間、事実解明に後ろ向きな姿勢に終始してきた。交渉記録は「破棄した」との説明で乗り切ろうとする対応は許し難い。安倍政権は、国民が納得するよう説明責任を果たすべきだ。