<社説>安倍内閣改造 永田町の論理は通用せず


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 顔ぶれを変えたからといって過去の疑惑、不祥事が消えるわけではない。

 安倍晋三首相が内閣改造を実施し新たな自民党四役を決定した。資質を不安視された閣僚らを一掃し、閣僚経験者の再登板や、距離があるとされた野田聖子氏を取り込んでバランスに気を使った。しかし、これは永田町だけに通用する論理にすぎない。
 問題なのは閣僚だけでなく首相への不信感の高まりだ。森友・加計学園問題や南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽問題で説明責任を果たし、真相究明に取り組まない限り信頼回復にはつながらない。
 沖縄県民の民意を無視して名護市辺野古に新基地建設を強行する姿勢を改め、建設断念に舵を切らなければ沖縄の支持は得られまい。沖縄の施策に関係する河野太郎外相、小野寺五典防衛相、江崎鉄磨沖縄北方担当相も同様だ。
 共同通信が実施した7月の世論調査で、安倍内閣の支持率は、2012年の第2次政権発足以来最低の35・8%となった。不支持率は10・0ポイント増で最も高い53・1%。支持と不支持が逆転した。不支持理由として「首相が信頼できない」が前回比9・7ポイント増の51・6%で最多だった。第2次安倍政権以降で初めて半数を超えた。
 今回の内閣改造で加計学園問題に関係する山本幸三地方創生担当相や松野博一文部科学相を交代した。松野氏は「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」と記載された一連の文書への対応などで批判された。山本氏は松野氏との説明の食い違いが露呈し、国民の不信を強める一端になった。
 2人の閣僚を退場させても加計学園を巡る疑惑は依然として解明されていない。真相解明は急務だ。
 7月の閉会中審査で、安倍首相は加計学園の獣医学部新設計画を「学園の申請が認められた今年1月20日の諮問会議で知った」と以前の答弁と食い違う説明をした。首相の答弁の整合性が問題になっている。自身の説明責任が問われている。
 森友学園問題も、前理事長と妻の逮捕で幕引きとしてはならない。国有地がなぜ8億円余りも値引きされたのか、首相や昭恵首相夫人、政治家の関与はなかったのか。徹底究明が急がれる。
 南スーダンPKO日報問題は、直接の責任者で虚偽答弁が疑われている稲田朋美前防衛相が辞任したからといって、問題をうやむやにしてはならない。稲田氏を国会招致すべきだ。防衛省・自衛隊の隠蔽(いんぺい)体質にメスを入れ、シビリアン・コントロール(文民統制)を機能させる必要がある。
 強引な国会運営や閣僚らの失言がもたらした政治不信は、小手先の内閣改造では解消しない。首相の政治姿勢が問われていることを肝に銘じなければならない。