<社説>菅氏の「誤説明」 「条件隠し」を強く疑う


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 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの飛行自粛を求めた際に「運用上必要なものを除く」との条件を付けたかどうかで、要請の重み、効果は大きく変わる。その当然の認識が菅義偉官房長官には欠けている。

 米軍普天間飛行場所属オスプレイの豪州での墜落事故を受けた米側への飛行自粛要請について、菅氏は条件付きだったとの説明を訂正した。「条件を付すことなく」要請していたというのである。
 菅氏は小野寺五典防衛相の米側への申し入れについて「条件付き」要請を明言していた。小野寺氏は「(運用上必要なものを除くとは)言っていない」とし、説明が食い違っていた。
 菅氏が挙げる誤った説明を招いた理由は、到底納得できるものではない。
 小野寺氏に対して米側が「運用上必要な飛行である」と説明したことを「取り違えて秘書官から報告された」とした。だが、防衛省関係者は「自粛要請は運用上必要な場合を除きということをもともと含んでいる」と明言していた。菅氏は、秘書官に責任を押し付けているようにしか見えない。
 たとえ秘書官が取り違えたとしても「運用上必要なものを除く」との条件を付けた要請に、疑問を持たなかったのだろうか。飛行自粛につながらないことは明白であり、再度確認すべきである。
 菅氏は「運用上必要なものを除く」との条件を付けた飛行自粛要請を当然視していたのではないか。要請は形だけでいいとの認識があったのではないか。
 その証拠に、自粛要請を米側が無視し、米軍が沖縄県内で飛行を再開しても、政府は一切抗議していない。
 それどころか、菅氏は米軍が自粛を拒否する理由を「現下の厳しい安全保障環境を考えたとき、米側は運用上必要だと判断したと思う」と説明した。米側に代わって自粛拒否を正当化していることは看過できない。
 菅氏が条件付き要請を明言した際の小野寺氏の発言も理解し難い。「米側に求める立場にいるのは私だ」とした上で、菅氏の発言について「言い方を少し変えて言った中で、そういう言葉になったのではないか。(自身との)齟齬(そご)はない」と述べた。
 小野寺氏は、条件を付けていない全面的な自粛要請だとしながら、条件を付けたとの発言とは食い違いがないとしている。そんな論理が成り立つはずがない。安倍政権の隠蔽(いんぺい)体質からして「条件隠し」さえ強く疑われる。
 北海道で始まった陸上自衛隊と米海兵隊の共同訓練で、普天間飛行場所属のオスプレイは初日の参加を見送った。北海道では地元自治体の要望を受け入れたのに対し、沖縄では米側は県の抗議にも耳を傾けずに飛行を再開し、政府も容認している。この二重基準も許し難い。