<社説>知事・防衛相会談 「耳傾け努力」に程遠い


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 何の目的で沖縄に来たのだろうか。当然の要望に背を向けた対応は言行不一致そのものだ。一切評価できない。

 小野寺五典防衛相が翁長雄志知事と就任後初会談した。米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが豪州沖で墜落した直後である。知事は当然、オスプレイの配備撤回を求めたが、防衛相は「オスプレイは安全保障上、大変重要な装備」として拒否した。県民を犠牲にすることを当然視した安全保障の正当化にほかならない。強く抗議する。
 普天間飛行場所属のオスプレイは昨年12月以降、2機が墜落している。普天間飛行場には24機が配備されており、12機に1機という高い確率で落ちているのである。
 防衛相はいつ落ちるか分からない危険なオスプレイを、米軍が今後も自由に県内で飛ばすことを認めるのである。それを受け入れよとの姿勢はいかがなものか。
 防衛相は米軍に対して「引き続き安全に最大限配慮した飛行をお願いしている」とも述べた。米軍も隊員を守るため、安全な飛行を心掛けているはずだ。だが、それでも事故は起きるのである。「安全飛行」のお願いで、事故が無くなることはまずない。最も有効な安全対策はオスプレイの飛行禁止しかない。
 知事が「オスプレイは沖縄で毎日飛んでいるのに、なぜ北海道では4日間自粛しているのか」と質問したのに対し、防衛相はその理由に言及しなかった。それ以上に「今後、北海道で訓練するかは日米で調整し決めていく」との発言は看過できない。
 沖縄では、米軍と防衛省がオスプレイの飛行再開で調整した形跡はない。米軍が「飛行する」と言えば、無条件に認めているのが実際だろう。だが、沖縄以外では日米で調整して決めるのである。このような二重基準は断じて認められない。
 防衛相は、基地負担の軽減で知事が県民の気持ちを代弁しているとし「そういう声に耳を傾けて努力していく」と述べた。防衛相の対応はその言葉とは程遠い。
 米軍嘉手納基地の旧海軍駐機場使用やパラシュート降下訓練を外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で取り上げることを明言しただけで、米軍基地問題は解決に向けて何ら進展はなかった。
 それ以外の辺野古新基地建設断念など県の要望に対しては、従来の政府方針の押し付けに終始した。真に「耳を傾けて努力」するならば「ゼロ回答」のはずがない。
 防衛相はシュローティー在日米軍副司令官らに会い、「(県民の)不安の声についてしっかり伝えさせていただいた」と述べた。
 だが、防衛相自身が口だけの対応に終わっている。行動の伴わない防衛相が米側に伝えても、目に見える改善などは期待できない。