<社説>児童虐待過去最悪 あらゆる施策で防止を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 1990年度の集計開始以来、26年連続で児童虐待の件数が増加している。この状況に早急に歯止めをかけねばならない。

 全国に210カ所ある児童相談所が2016年度に対応した児童虐待の件数は12万2578件(速報値)で、過去最悪の多さとなった。児童虐待件数は15年度に比べ18・7%も増えている。
 児童虐待件数の増加傾向が止まらない背景には、これまで見過ごされてきた事案が児童虐待事案に対する意識の高まりを受けて、児相への通告増加という形で現れた可能性もある。
 警察、病院、学校と児相の連携が進んだことも、件数増加の一因ともいえる。市民を含め、児童虐待防止に対する意識と関心をさらに高め、児童虐待防止につなげる機運を社会全体で盛り上げたい。
 児童虐待を防止する上で、大きな課題はその核となる児童福祉司など専門職を含めた人員が圧倒的に不足していることである。
 児童虐待は15年前の約5倍に増えている。その一方で、保護者や子どもの対応に当たる児童福祉司の人数は倍増にとどまっている。
 これでは、児童虐待事案に適切に対応することは難しい。児童虐待件数など実情に合った専門的な人材の確保は急務である。
 国が昨年公表した「児童相談所強化プラン」は児童福祉司や児童心理司、保健師など全国の児童相談所に配置する児童虐待に対応する専門職について、19年度末までに計1120人程度増やす目標を示している。
 児童福祉司のうち、同僚への指導・教育も担う「スーパーバイザー」は15年度末の470人から110人程度増員し580人を目指す。心理面での専門知識や技術を持ち、カウンセリングなどを担当する「児童心理司」は、1290人から450人程度増やし1740人にする。健康面を担当する「保健師」も90人から120人程度増の210人を目標とする。
 専門人材の増員方針は評価するものの、件数増加にマンパワーが追い付かないことを危惧せざるを得ない。対応が後手に回ることがあってはならない。専門職などの増員数の見直しを含め、児相プランを総点検し、実効性ある体制づくりを求めたい。
 一方で、児童虐待対策を全て児相に負わせることは現実的ではない。住民に最も身近な基礎自治体で、子育て支援を担う市町村も、さらに積極的に児童虐待防止などで役割を発揮してほしい。
 保護者が地域から孤立したり、家庭の経済状況が悪化したりすることが児童虐待につながるとの指摘もある。その対策も急務である。
 国と各自治体は児童虐待防止に効果的なあらゆる施策を講じ、子どもたちの安全を守り、健やかに育てる社会を最優先で築いてもらいたい。