<社説>大型MICE施設 早急に一括交付金決定を


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 国際会議や見本市、企業の報奨旅行を誘致する大型MICE(マイス)施設建設で事業費の一括交付金交付決定が遅れているため、開業時期の遅れが懸念されている。

 国と県はMICE施設を沖縄の経済振興の柱とすることで一致しているはずだ。早急に事業費の交付を求める。
 内閣府は「施設の採算性で根拠ある収支見込みを県が整理しておらず、ホテルなどの周辺環境整備で具体的な見込みを出していない」と交付決定が遅れている理由を説明している。
 一括交付金は、従来のひも付き補助金に比べ、沖縄側の使途の自由度が高く「沖縄振興に資する」「沖縄の特殊性に起因する」との交付要件がある。
 県は今年5月、振興計画である「沖縄21世紀ビジョン基本計画」を改定し、大型MICE施設を核とした産業振興を追加した。まさにMICE施設は「沖縄振興に資する」ものであり、一括交付金の要件に合致している。
 内閣府が採算性を問うのは当然だが、なぜ振興策として位置付けられるこの事業の着手をしぶるのか。
 内閣府の姿勢は、かつて都市モノレールの予算計上をしぶった沖縄開発庁と重なる。モノレールは1972年12月の沖縄振興開発計画で「新交通システム」として提起された。79年に西銘順治知事が開発庁に建設促進を要請した。だが、開発庁は採算性など問題点が多いとして実施調査費計上に応じず、西銘県政3期12年間、前に進まなかった。
 沖縄都市モノレールは、ようやく2003年に開業した。これまでにモノレール直下の国道の交通量が減るなど渋滞緩和の効果を上げた。沿線の開発も進み公共投資の成功例だ。沖縄都市モノレールの16年度決算は、昨年の乗客数が過去最高を記録したことで初の黒字となった。
 モノレール同様、大型MICE施設も、沖縄経済の重要な基盤となる。アジアと日本をつなぐ沖縄の優位性を生かし、国際的な経済・学術交流、展示会・見本市の一大拠点となる可能性がある。
 参加者の滞在期間が比較的長く、経済・消費活動の裾野が広い。それだけではない。海外企業が沖縄を訪れることで新たな商機が生まれ、沖縄のブランド力の向上にもつながる。
 県は最大10万人の動員が見込まれる催事3件の仮予約があり、開業6年目で黒字化できるとの試算などを基に一括交付金の交付決定を求めている。周辺整備に関してもホテル11社が建設を検討し、うち2社は設計図を作成するなど需要と採算性の根拠はあると主張。施設建設や周辺道路整備などの経済効果は3607億円に上ると試算している。
 基本設計を実施すればより精密な数値が挙げられるだろう。一括交付金を交付しなければ機会損失につながりかねない。