<社説>学力テスト 貧困の克服が鍵握る


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 全国の小学6年生と中学3年生の全員を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学テ)結果が発表された。

 一斉テストは学校や都道府県の競争をあおり、序列化につながると問題視されている。しかし、本来の目的は、結果を基に、弱点を知り教師の指導や授業の改善に役立てることにある。今回の結果から貧困と学力の関係が見えてきた。この知見を教育政策に生かしてほしい。
 全国的には小学校と中学校の学テの結果は、ほぼ一致するが、沖縄県は小学校に比べて中学校が振るわないと言われる。今回注目されたのは、3年前の小6時代に大きく順位を上げた子どもたちが中3となり、どのような結果を残すかだった。
 結果は、中学の平均正答率は前年より伸びたが、全国との差はそれほど縮まらなかった。琉球大学の長谷川裕教授が各都道府県の正答率と貧困率を分析した結果、貧困率が高いと正答率は下がる傾向があることが分かった。
 小学校ではばらつきながら緩やかにその傾向が表れるが、中学校ではかなりはっきりする。困難な生活状況により勉強に意識が向けられない。今回の全国学テで沖縄の中学校の結果は、子どもの貧困率と対応しているという。
 沖縄県の子どもの貧困率は29・9%と深刻な状況にあり、貧困の世代間連鎖の防止に本腰を入れる必要がある。県は沖縄振興計画「沖縄21世紀ビジョン基本計画」期間の後期5年に向けた改定案の柱の一つに「子どもの貧困対策」を据えた。課題の解決に向けて全力で取り組んでほしい。
 成果を上げている取り組みとして無料塾が挙げられる。県が実施した無料塾を受講した小中学生アンケートによると、通う前と比べて学習意欲や自己肯定感の上昇につながったと答えた子どもが多いことが明らかになった。無料塾をさらに拡充させたい。
 県外だけでなく、県内で学ぶ学生を対象とした県の給付型奨学金の創設も必要だ。
 学校では、多忙な教師の働き方を改善しなければならない。文部科学省が公表した16年度の公立校教員の勤務実態調査結果で、学校内勤務時間が週60時間以上の教員が小学校で33・5%、中学校で57・7%に上った。生徒指導や部活動、学校運営に関する事務作業などで時間を割かれ、学習指導に十分時間を取れないという。
 児童生徒と余裕を持って向き合える環境を確保するため、教師の増員と負担軽減、少人数学級の実施など、抜本的な取り組みが必要だ。
 家庭での取り組みも重要だ。今回、同時に実施した「児童・生徒質問紙」によると、「家の人と学校での出来事について話をしますか」との質問に「している」と答えた小学生の割合は、全国平均より7・7ポイント低かった。教育の基本は家庭にあることを忘れてはならない。