<社説>概算要求減額 沖縄振興の自主性尊重を


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 内閣府は2018年度の沖縄関係予算を3190億円に決定し要求した。17年度概算要求比では20億円減となり、安倍晋三首相が21年度までの3千億円台維持を確約して以降の要求としては最少額となった。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への移設作業では、県と国は真っ向から対立している。こうした状況が要求額の減につながっているとしか思えない。
 概算要求で比較すると、仲井真弘多前知事が辺野古の埋め立て手続きを承認した翌年夏に、内閣府が要求した15年度分3794億円をピークに604億円も減額している。
 辺野古移設に反対し、埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事に代わって、3年度連続の減額だ。やはり政府の意向に従わない県に対して、政治的な裁量が働いていると思わざるを得ない。
 菅義偉官房長官は昨年8月の会見で辺野古移設と予算について「工事が進まなければ予算が少なくなるのは当然ではないか」と述べた。基地と沖縄振興がリンクしているかのような言い方だ。
 減額幅が大きいのは沖縄振興一括交付金だ。17年度概算要求より85億円、当初予算比105億円の減額だ。制度創設以降、最も低い額での計上だ。前年度の減額時に内閣府が理由に挙げたのは不用額や繰越金の多さだった。
 このため県は指摘を踏まえて改善に向けた対策に力を入れ、執行率改善に努めてきた。しかしこうした県の姿勢は重視されていない。一括交付金の減額によって、県が計画する大型MICE施設(総事業費513億円)の財源確保が困難となった。20年9月開業のめどが厳しくなっている。減額ありきではないか。
 翁長知事は一括交付金の減額について「県と市町村の自主的な選択に基づく沖縄振興の施策展開へ影響が生じかねず、極めて残念だ」と批判した。当然だ。
 一方で沖縄関連予算のうち国直轄の事業は減額されずに増額や同額が目立つ。沖縄科学技術大学院大学(OIST)への補助金は17年度当初予算比48億円増の215億円で、那覇空港滑走路増設事業費は同額の330億円だ。
 自治体が一定程度使途を自由に決められる一括交付金が大幅減額され、国直轄が増額されれば、沖縄の自主性が後退することになる。翁長知事が批判するのもうなずける。
 沖縄関係予算は政府が沖縄関連の直轄事業や交付金を取りまとめたものだ。国から都道府県への財政移転でみても、沖縄県は2014年度決算ベースで全国12位だ。沖縄県だけが突出しているわけではない。
 沖縄の自立発展と豊かな住民生活を目指すのが沖縄振興策の基本方針だ。政府はこうした趣旨に沿い、沖縄の自主性を尊重した概算要求の積算をしたのか。県民に十分な説明を尽くす必要がある。