<社説>県内人手不足 働き方の質を変えよう


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 観光客や人口の増加、それに伴う消費意欲の伸長などを背景に、沖縄経済が好調なのは誰もが認めるところだ。

 有効求人倍率は10カ月連続で1倍を超えている。復帰直後の1972年は0・19倍しかなく、2010年代前半まで40年近く0・2~0・5倍前後だった。各種の指標は県経済がかつてない好況にあることを示している。
 那覇職業安定所によると、好況と人手不足を背景に恩納村・宜野座村以南の新規高卒者求人受理件数は17年7月末時点で1802人となり、12年と比べると5年で4倍の水準となっている。
 地元に働く場が増えてきた証しである。現在の好況を持続的な雇用、発展につなげる官民の連携が求められる。
 一方で見過ごせないのは、人手不足による労働環境の悪化が顕在化してきたことだ。
 沖縄労働局が2016年度に長時間労働について重点監督指導した結果では、長時間労働が疑われる226事業所のうち、78・8%に当たる178事業所で労働基準関係法令違反があった。
 このうち違法な時間外労働は54・0%に当たる122事業所あった。全国の指導結果を11ポイントも上回る結果だ。
 違法な時間外労働があった122事業所のうち月80時間超は77事業所、月100時間超は62事業所、150時間超は16事業所もあった。一般に過労死ラインとされるのは時間外労働が月80時間超である。業種別では接客娯楽業が75・0%、建設業64・7%などとなっている。
 接客娯楽業が突出している結果などを見ると、観光客の増加に対して、県内の観光関連業者の態勢が整っていないといえる。労働局の調査によると、あるホテルでは繁忙期に月142時間を超える時間外労働があったという。
 一刻も早く県内の人手不足を解消しなければならない。「雇用の量」が確保されつつある今、「雇用の質」を保障する対策に今すぐ着手しなければならない。働き方の質を変える時期に来ている。
 沖縄労働局をはじめ関係機関は今後、さらに指導監督を強める方向にある。だが根本的に解決するには、企業側の努力が不可欠だ。
 例えばホテルの客室清掃など障がい者に門戸を広げるなどの対応が考えられる。県内では複数の宿泊施設から業務を請け負う福祉事業所もあり、活躍の場があることは間違いない。
 人材育成にも着手しなければならない。外国人観光客が増える中、多言語対応はさらに重要性を増す。観光関連の業種では特にそうだ。単に労働者を集めるだけでなく、語学など「質」の面でも企業には支援する意欲を求めたい。
 県経済が好調とはいえ、働く人々の健康や生活が破壊されるのであれば、真の繁栄とは言い難い。行政機関や労使が知恵を出し合い、改善策を見つけていきたい。