<社説>オスプレイ報告書 不安はますます高まった


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 県民の「不安という負担」は増すばかりだ。

 昨年12月に名護市安部の海岸に墜落した米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、日米両政府は事故調査報告書を公表した。「困難な気象条件下で空中給油訓練を行った際の操縦士のミス」とし、「機体の不具合又は整備不良が事故の要因となる兆候はなかった」と結論づけた。
 米軍は2015年にも空中給油機の給油口に接触した事故を米国内で起こしていた。日本政府は安部の墜落後、空中給油再開を容認した際に「空中給油でこのような接触が発生したのは初めて」と説明したが、覆された。
 事故原因も曖昧で、再発防止につながらない報告書で事故に幕引きをするのは許されない。
 報告書に記した「状況」を見ると疑問が湧く。
 乗員らは当日の飛行全体のリスクは低いと評価した。風速10~15メートルとやや強い程度。操縦士らに疲労やストレスの兆候は見られず、任務遂行能力や専門技術に対する懸念が全くない、有効な資格を有していた-と記す。
 事故について、空中給油訓練でオスプレイがMC130の給油口への接続を試みた際、パイロットが出力を上げ過ぎ、MC130と近づき過ぎて給油口がオスプレイの右プロペラに接触し、バランスを崩したと説明する。当時、回転翼を垂直にする固定翼モードで飛行していたが、機体が不安定になってヘリモードに変更できず、「制御された緊急着水を行った」という。
 機体が不安定になった際に着陸用のヘリモードに変更できなかったことなど、操縦の難しさが浮かび上がる。能力や技術力に問題のない操縦士でも事故を起こす可能性がある。
 しかし再発防止策としては訓練や教育の再確認を挙げるにとどめる。
 さらにオスプレイは構造的な欠陥も指摘されている。国防研究所(IDA)でオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏は、オスプレイが回転翼を垂直にした固定翼モードでしか空中給油が受けられないことを挙げ、「ヘリモードで補給ができないという事実は、予期されなかった欠陥」と指摘している。
 オスプレイは安部の墜落以降も、今年6月に伊江島や奄美で不時着し、8月にはオーストラリア沖で墜落して3人が死亡した。伊江島で不時着した機体は大分空港に緊急着陸した。
 安部の墜落は危険性が指摘されていた空中給油中に発生した、バランスの取りづらいオスプレイ特有の事故だったことが裏付けられた。しかし、報告書は機体の安全性を強調する内容に終始している。
 これでは県民の不安解消には程遠い。オスプレイが危険な機体であることを直視し、住民地域に近い県内への配備を撤回すべきだ。