<社説>宮里藍選手引退 充実した14年たたえたい


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 日本中を驚かせた18歳での国内ツアー優勝から14年、女子プロゴルフの宮里藍選手が競技生活に別れを告げた。

 宮里選手にとっての最終戦となった米ツアー・エビアン選手権は、上原彩子選手も上位を争うなど宮里選手だけでなく県勢に注目が集まった。
 短いながらも充実した現役生活を宮里選手は「やり切った気持ち」と表現した。重圧とも闘いながら駆け抜けた14年で宮里選手は次世代に多くのものを残してくれた。女子ゴルフの人気回復とツアーの隆盛といった功績は誰もが認めるところだ。
 さらには米ツアーへの挑戦を通して示した挑戦する気概や、日本勢だけでなく海外も含めた新人選手への心配りは、後に続くジュニア選手、現在プロとなった多くの後輩の目標とされた。特に多くの影響を受けた県出身プロには、宮里選手がいなくなった女子プロゴルフ界をそれぞれが担っていくという自覚を期待したい。
 現役生活を終え、宮里選手は「自分自身にお疲れさまと言いたい」と述べた。
 宮里選手をねぎらい、感謝すべきはわれわれファンの方だ。偉大なるプレーヤーの幕引きに惜しみない賛辞を送り、残してくれた数々の名勝負と次代を担う選手を生み出したことに「ありがとう」と伝えたい。
 宮里選手が5月に今シーズン限りの引退を表明して以降、改めてその存在の大きさを認識させられた。
 8月にイギリスで開催されたメジャー第4戦、全英女子オープンは日本国内ランキングの上位者や前年大会の上位者らに参加資格が与えられる。宮里選手は条件を満たしていなかったが、過去の実績や貢献度が認められ、主催者の特別承認で出場した。
 メジャーといわれる主要大会は、世界各国の一流選手が集い、選手にとっても参戦は名誉である。
 宮里選手の最終戦となったエビアン選手権は過去に2度の優勝経験があり、自身にとっても思い出深い大会だった。今回は主催者の計らいで予選の同伴競技者を指名する権利が特別に与えられた。
 日本だけでなく、世界中のゴルフ関係者が宮里選手の実力と功績を認めた証しだ。沖縄から巣立ったプレーヤーが一つの時代を築き、世界で評価されたことを県民として誇りに思う。
 宮里選手といえば、誰もが思い浮かべるのは「藍ちゃんスマイル」と強い意志を感じさせる瞳だろう。もう「藍ちゃんスマイル」を見る機会は少なくなるだろうが、多くのファン、県民の中にその笑顔はいつまでも刻まれる。
 引退後に目指す方向は「1年かけて考えたい」という。その真っすぐな瞳が目指す舞台はどこなのか。新たな挑戦を応援したい。
 最後に改めて伝えたい。ありがとう藍ちゃん。その輝きは誰もが忘れない。