<社説>米軍機夜間早朝飛行 県民の望む「負担軽減」を


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 住民生活への重大な影響を一顧だにしない米軍の姿が改めて浮き彫りになった。夜間・早朝の爆音放置は許されない。安倍政権は自ら約束した「沖縄の負担軽減」を県民が望む形で実現する責任を自覚し、改善すべきだ。

 沖縄防衛局が米軍嘉手納基地と普天間飛行場で、今年4月から実施している24時間の航空機離着陸調査の結果からも、騒音規制措置(騒音防止協定)が有名無実化していることがはっきりした。
 嘉手納基地では7月までの4カ月間で、1万8799回の離着陸(タッチ・アンド・ゴーや通過、旋回を含む)があった。そのうち騒音防止協定で飛行が制限されている午後10時から午前6時までの夜間・早朝は647回だった。普天間飛行場では5084回の離着陸があり、夜間・早朝は224回だった。
 県民生活よりも、訓練を優先する米軍に強く抗議する。だが、騒音防止協定には規制除外のただし書きがあり、何ら実効性がない。抜け道だらけの騒音防止協定に照らせば、米軍は協定を守っていることになる。
 夜間訓練飛行は「必要な最小限に制限される」などとし「部隊司令官は、できる限り早く夜間の飛行を終了させるよう最大限の努力を払う」としているだけで、米軍は「運用上必要」「努力した」とすれば協定破りにはならないのである。とても「騒音規制」とか「騒音防止」と呼べる協定ではない。
 看過できないのは、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが普天間飛行場の夜間・早朝の離着陸回数に占める割合の高さである。224回のうち43%に当たる97回はオスプレイである。昨年12月以降、普天間飛行場所属の2機が墜落するなど、オスプレイは住民にとって脅威でもある。即時撤去を強く求める。
 嘉手納基地では、離着陸総数の35%、3分の1が外来機だったことも許し難い。
 日米両政府は2011年、周辺地域の負担軽減を名目に、嘉手納基地所属機の訓練移転に合意した。だが訓練移転以上に、嘉手納基地を拠点に訓練する外来機の方が圧倒的に多いのではないか。それが県民の実感である。負担は軽減されることなく、増大しているのは明らかである。
 今年の沖縄全戦没者追悼式で、安倍晋三首相は「沖縄の方々には長きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいており、この現状は到底是認できるものではない。政府として基地負担軽減のため、一つ一つ確実に結果を出していく決意だ」と述べた。
 この言葉が本心なら直ちに実行すべきだ。夜間・早朝の米軍機飛行の全面禁止だけでは不十分である。オスプレイの配備撤回、名護市辺野古への新基地建設断念など、県民の重しとなる全ての「基地負担」を軽減ではなく、排除する責任が安倍首相にはある。