<社説>8月観光客100万人突破 質向上で満足度高めたい


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今年8月の入域観光客は100万2500人となり、月間で初めて100万人の大台を突破した。県が2021年度までに目指す年間1200万人が視野に入る快挙だ。沖縄経済を支える観光をさらに飛躍させるためにも、さまざまな課題を克服したい。

 沖縄総合事務局は今年7月期の管内経済情勢報告で、1972年の日本復帰後、初めて沖縄経済を「拡大している」と断言した。日本が活況に沸いたバブル期よりも景気状況が良いと位置付けたのだ。こうした景況をけん引しているのが観光だ。
 8月入域客の内訳は国内客が72万6800人で、外国人客が27万5700人だった。国内客が初めて70万人台を超え、外国人客も前年同月比で18・8%も増加した。
 こうした入域客の増加を支えているのが航空路線の拡充だ。那覇空港の海外就航便は2010年度末の週30便から17年7月末時点で週201便にまで増えている。
 ホテルの稼働率も好調だ。沖縄振興開発金融公庫が調査した16年度の県内主要ホテルの稼働率はシティー、リゾート、宿泊特化型の全てで80%を超えた。全タイプが80%を超えるのは初めてだ。
 さらに成長著しいアジア市場から飛行機で数時間という沖縄の地理的優位性を見込んで、大手ホテルの開業が続いている。
 だが、いいことずくめというわけではない。増加する観光客に対応できず、多くの課題も横たわる。7~8月の最盛期は空路で沖縄に着いた観光客がレンタカーを受け取るまでに2~3時間かかるという。沖縄観光のイメージ悪化につながりかねない。
 沖縄公庫が昨年11月に県内主要ホテルから回答を得た調査では、9割が人手不足を指摘した。客室清掃が間に合わず、チェックインの時間が遅れたり、従業員の長時間労働が恒常化したりしている。
 公庫は20年までに6千~8千の新たな客室整備が想定されていると積算し、開業には4千人以上の雇用が必要になる計算だ。現状でも人手不足だ。外国人の積極雇用など、新たな環境整備も必要だ。
 外国客の4割強に当たる11万8800人は大型クルーズ船など船舶による入域だ。国内客の船舶利用4600人の0・6%と比べても、外国客の船舶利用の比重の高さは際立っている。
 しかし接岸する港の受け入れ態勢は十分とはいえない。那覇港新港ふ頭ではタクシー不足で3時間も待つ客もいる。到着後の交通アクセスにも改善が必要だ。
 21年度までの年間1200万人という目標に向けて、官民挙げてのさまざまな取り組みが求められる。観光客一人一人の満足度を高めるなど質向上に努め、県民所得の着実な増加にもつなげるべきだ。月間初の100万人突破を機に、沖縄観光が目指すべき方向を考える契機にしたい。