<社説>9氏に琉球新報賞 献身的な姿勢を誇りたい


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 沖縄の社会、経済、文化など各分野の発展に尽くした功績は計り知れない。深く感謝したい。

 第53回琉球新報賞は豊かな沖縄づくりに邁進(まいしん)した9氏が受賞する。沖縄振興・自治功労は2氏に贈られる。
 新垣雄久氏は政府の補助を活用し、特別養護老人ホームの開所を後押しした。副知事時代は沖縄の自立発展に力を注いだ。「責任感だけで突っ走ってきた」との言葉に行政マンの誇りがにじむ。
 宮本憲一氏は復帰前から米軍基地を「沖縄発展の阻害要因」と指摘。「沖縄は独自の自然、文化、風土を生かして内発的発展を遂げるべきだ」と提言し続けた。その実現が今、県民に求められている。
 経済・産業功労は2氏が受賞する。
 奥キヌ子氏は切らずに痔を治す新薬「ジオン」を開発した。県内企業の新薬承認は初めてだった。「さらに精進し、期待に応えられるよう決意も新たに頑張りたい」。歩み続ける姿勢を見習いたい。
 〓肥健一氏は、そば粉を使わない沖縄そばに「そば」の名称は表示できないとする国を翻意させた。「沖縄そばを知らない人は、食を知らないと言われるように」。沖縄の食文化への思いは今も熱い。
 社会・教育功労は2氏に決まった。
 瀬名波榮喜氏は名桜大学の礎を築き、公立大学への移行にも尽力した。「戦争の悲惨さも若い世代に伝え、社会のため、人のため役立つことを尽くしていきたい」。教育への情熱は衰えを知らない。
 川平朝清氏は東京沖縄県人会会長を務めた。「観光地としては知識や親しみが深まっているが、基地や人権、主権を巡る問題としては浸透していない」。本土と沖縄の溝を埋める決意は揺るがない。
 文化・芸術功労は3氏に贈られる。
 西江喜春氏は琉球芸能を「これ以上の心のよりどころはない」とする一方で「いい歌を歌えたと感じたことは一回もない。反省のみだ」とも。人間国宝となっても精進する姿勢は後進のかがみである。
 玉那覇有公氏は紅型に現代感覚を取り入れた独自の両面染めを生み出した。「着物は風合いを大事にし、現在の人に着られるものでなくてはならない」。伝統をさらに進化させる気概に学びたい。
 瀬名波孝子氏は沖縄芝居の役者として75年、舞台に立ち続ける。沖映演劇で多くの主役を演じた。「若い子に負きてーならん(負けてはならない)」。その決意は沖縄芝居をさらに深化させよう。
 9氏に共通するのは日本復帰前、そしてその後の激動の時代を強い信念を持って乗り越えてきた「強さ」を備えていることだろう。
 歩んだ道は違えども、9氏がそれぞれの分野に残した足跡は、沖縄の発展に大きく貢献するものとして歴史に刻まれている。各氏の献身的な姿勢を誇りたい。

※注:〓は「土」の右肩に点