<社説>育休取得2歳まで 周囲の理解が不可欠だ


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 子育ての支援制度が充実しても、活用できなければ意味はない。制度利用に対する周囲の理解が不可欠である。

 育児・介護休業法が改正され、10月から育児休業は保育所に入れないなどの場合、申し出ることで最長で子どもが2歳になるまで延長される。
 希望しても認可保育所などに入れない待機児童は今年4月時点で、昨年より2528人多い2万6081人と3年連続で増えている。都道府県別で沖縄は2番目に多い2247人である。
 待機児童が一向に減らない中、預け先が見つからないことによる離職を一定程度防ぐ効果が期待される。延長を評価したい。
 育休の期間は、現在は原則として子どもが1歳までとなっている。保育所に入れない場合などでも、延長できるのは1歳6カ月までである。
 だが、そこまで延長しても預け先が見つからず、離職せざるを得ない状況に追い込まれる女性は後を絶たない。育児と仕事のいずれかの選択を迫られる状況に、終止符を打たねばならない。
 取得期間延長は前進ではあるが、職場の理解がなければ、育休制度を十分生かしきることは難しい。
 一般財団法人「1more Baby応援団」(東京)が今年4月、インターネットを通じて、子育てをしながら働く20~39歳の女性529人に実施した調査で、「上司の目(態度・反応)が気になる」と答えた人が37・6%に上った。「同僚の目が気になる」が32・4%で続き、「育休が明けてすぐに次の子どもを授かると、育休を取りづらい空気がある」は30・1%だった。
 育休制度は育児・介護休業法で保障されている。心苦しさや、後ろめたさを感じさせるような雰囲気があることを改善する必要がある。
 併せて「子育ては女性」との固定観念も排除したい。
 厚生労働省の2016年度雇用均等基本調査によると、女性の育休取得率は前年度より0・3ポイント上昇して81・8%と5人に4人が取得している。これに対し、男性は0・51ポイント伸びて過去最高となったものの、それでも3・16%でしかない。
 九州大の研究チームは、男性の育休取得が進まない要因の一つとして「自分は育休を肯定するが、周囲は否定的に違いない」と誤って忖度(そんたく)してしまう「多元的無知」と呼ばれる心理現象があるとの調査結果をまとめている。
 政府は2020年までに、男性の育休取得率を13%に引き上げる目標を掲げている。4年で約10ポイントも取得率を上げねばならず、ハードルは高い。
 16年の出生数は100万人を割り込み、少子化対策は喫緊の課題だ。職場の反応を気にせずに、男女ともに育休を取得できる社会の構築が急がれる。加えて、待機児童の完全解消に向けた保育所の整備も怠ってはならない。