<社説>柏崎刈羽原発「合格」 審査に疑問、廃炉の道を


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 「再稼働ありき」としか言いようがない。原子力規制委員会が出した結論は、厳正かつ慎重な審査からは程遠く、不信感が残る。

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働に向けて規制委が事実上の「合格」を出した。重大事故対策が新規制基準に適合しているとの判断だ。
 審査の焦点は「適格性」だった。福島第1原発で未曽有の事故を起こした当事者である東電が、再び原発を運転する資格があるかどうかだ。
 規制委は当初、厳しい姿勢で臨んでいた。田中俊一委員長(当時)は7月に東電の経営陣から直接聴取し、その不十分な取り組みに「第1原発の廃炉に主体的に取り組む覚悟と実績を示せない事業者に再稼働の資格はない」とまで断言していた。
 しかし、田中氏は退任直前の9月に方針を転換した。東電が「廃炉をやり遂げる」との文書を出して決意表明をすると、具体的な方策が示されていないにもかかわらず、条件付き容認に転じ、再稼働にお墨付きを与えた。
 極めて不可解だ。9月末には福島第1原発の建屋から高濃度の汚染水漏れの恐れがあるミスが発覚したが、4日の規制委では議論を避けた。
 相次ぐトラブルを検証することもなく、まっとうな判断が出せるのか。結論を急ぐ規制委には疑問符が付く。
 そもそも廃炉作業は遅々として進んでいない。使用済み核燃料の取り出し開始時期も3度目の延期となり、3年遅れの2023年度に先送りされた。
 福島県では今なお数万人が避難生活を強いられている。人災によって人生を変えられてしまった人たちに対して、東電は誠意を持って十分な補償と責任を果たしているだろうか。
 事故後もトラブルや情報隠蔽(いんぺい)が次々と発覚している。企業体質が安全優先主義に変わったかどうかは不透明だ。
 規制委が合格を出しても、直ちに再稼働できるわけではない。何よりも地元の同意が欠かせないからだ。
 新潟県の米山隆一知事は同意には第1原発事故の検証が必要で、3~4年かかるとの立場だ。地元・柏崎市の桜井雅浩市長は再稼働の条件として、1~5号機の廃炉計画を2年以内に提示するよう求めている。
 国内の原発が全て停止していた時期でも電力不足は起きなかった。再稼働を急ぐ理由は、消費者本位ではなく、巨額な廃炉費用に困る東電が経営立て直しの収益源とするためではないか。
 世界のエネルギー政策の潮流から、日本は後れを取っている。外国の電力会社は再生可能エネルギーに比重を移しつつある。コストがかかる原発は経営の観点からも重荷でしかないのだ。
 脱原発を求める過半の世論にも応え、全ての原発を廃炉にすべきだ。