<社説>米軍の日本軽視 対米追従が招いた結果だ


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 組織として即座に謝罪しない。事故原因の究明そっちのけで短時間での飛行再開を急ぐ。政府は米軍のやりたい放題をいつまで放置するのか。

 東村高江の牧草地に不時着し、炎上した米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリコプターの事故について、在日米軍のシュローティ副司令官は「私の個人的な」と前置きした上で「地元の地主の方々には心からおわびを申し上げたいと思う」と述べた。
 司令官が不在ということは理由にならない。なぜ、在日米軍として謝罪しないのか。しかも、個人的な謝罪の対象は「地主の方々」だけである。理解できない。
 地主への謝罪は当然だ。だが、それだけで済む問題ではない。地域住民の恐怖感は計り知れない。多くの県民にも大きな衝撃を与えたのである。その認識が決定的に欠けている。
 在日米軍の責任の重さ、事故の重大性を受け止めているのなら、組織として謝罪するのが筋だ。それを即座に実行できないのは社会規範に沿った対応ができないほど、組織が劣化しているためだろう。
 事故機と同型機の運用停止期間で、説明が食い違っていることも、不可解としか言いようがない。
 在日米軍は普天間飛行場に所属する同型機の運用を96時間(4日間)停止すると発表した。一方、沖縄防衛局は「小野寺五典防衛相とシュローティ副司令官が面談した際は『96時間』という話は出ていなかった」としていた。
 だが、小野寺氏はその翌日、「実は昨日の会談の中でも当初4日間を考えているという発言がシュローティ副司令官からあった」とし、期限を定めずに飛行停止するよう求め、同意を得られたと主張した。防衛局と小野寺氏の説明で齟齬(そご)が生じたのである。通常ではあり得ない。緊張感の欠如も甚だしい。
 いずれにせよ、米軍は日本政府から運用停止期間について同意を得る考えなどなかったのではないか。小野寺氏に方針を伝えただけで、小野寺氏の要請は無視した可能性さえ疑われる。
 自民党の岸田文雄政調会長は、ニコルソン在沖米四軍調整官とエレンライク総領事を呼んで抗議しようと米側と調整したが、拒否された。岸田氏は「米側の不誠実な態度は大変残念」と述べた。だが、県民は日米双方から不誠実な扱いを受け続けている。そのことを心に刻み、その状況を改善できるかが問われていることを知るべきだ。
 小野寺、岸田の両氏は、在日米軍が日本政府や政権与党さえ、軽く見ている要因を知るべきだ。日本側の醜いまでの対米追従姿勢が招いた結果である。
 その姿勢を大きく転換しない限り、日本は米国から属国のように軽視され続ける。その被害を最も受けるのは沖縄県民である。早急に是正することは政府の責務だ。